技術は教えていた。利益は教えていなかった。──製造業の新人教育を見直したH社の事例
「初めて定期採用を行うことになった。でも、どう教育すればいいか分からない。」
H社から最初にいただいたご相談は、新人教育についてでした。
高い技術力を持ち、多くのお客様から信頼されている会社です。
しかし、これまで人は現場で育ってきました。
技術は先輩から後輩へ受け継がれる。それで十分だったのです。
ところが、事業拡大に伴い初めて定期採用を実施することになり、「教える仕組み」を作る必要が出てきました。
お話を伺う中で、私は一つの”空白”に気づきました。
技術は教えている。
しかし、その技術が、どこで会社の利益になっているのかは、誰も教えていなかったのです。
それは、30年以上調達の現場で、利益が生まれる瞬間を見続けてきたからこそ見えた課題でした。
H社が抱えていた課題
教育の問題は、単に研修資料がないことではありませんでした。
- 新人教育がOJT中心で、体系化されていない
- 会社の理念や、ものづくりへの考え方をどう伝えるか悩んでいた
- 仕入・発注を担当する若手バイヤーの育成方法が確立されていなかった
技術力も設備も申し分ありません。
それでも私は、
「利益を意識して仕事をする人」を育てる仕組み
が不足しているように感じました。
図面を描く若手も、材料を発注する若手も、自分の判断が会社の利益にどう影響するかを知らない。
技術は受け継がれているのに、その技術が利益へ変わる仕組みは伝わっていなかったのです。
RE:GENが提案した二つの育成
私たちは、この課題を単なる新人研修ではなく、
「利益を生む人材を育てる仕組みづくり」
として考えました。
① 新入社員へ
「あなたの仕事は、どこで利益を生んでいるのか」
大手メーカーで培った教育経験をもとに、新入社員向けの特別講義を実施しました。
伝えたのは精神論ではありません。
図面一本の線。
材料を選ぶ一つの判断。
現場での一つの改善。
それらすべてが、会社の利益を決めているということです。
理論原価という考え方を通して、
「言われたことを作る人」
から、
「利益を意識してものづくりをする人」
への視点を育てました。
② 若手バイヤーへ
発注する力は、利益を守る力になる
もう一つの対象は、仕入・発注を担当する若手社員でした。
価格の妥当性をどう判断するのか。
サプライヤーとどのような関係を築くのか。
コストの改善余地をどこで見つけるのか。
これは一般的な研修会社の教材では教えられません。
実際に30年以上、発注する側として判断を続けてきた経験だからこそ伝えられる内容です。
若手自身が「会社の未来」を考える
座学だけでは終わりません。
ワークショップでは、
「H社の未来を、自分たちならどうつくるか」
をテーマに議論してもらいました。
答えを教わるのではなく、自分たちで考える。
会社の未来に、自分の意見が反映されるかもしれない。
その経験が、当事者意識を育てていきました。
成果
研修後、H社からはこんな言葉をいただきました。
「若手が、自分の仕事が原価にどうつながるかを話すようになりました。」
「メーカーでの経験と、多くの企業を見てきた視点が、そのまま教育に生きていました。」
私自身、この言葉が一番うれしかったのを覚えています。
研修が成功したからではありません。
利益という言葉が、現場で自然に使われ始めたからです。
技術と利益を、結び付ける
私は30年以上、製造業の現場を見続けてきました。
技術だけでは利益になりません。利益だけを追っても、技術は育ちません。
その二つを結び付ける人材を育てること。それが、会社の未来を強くします。
RE:GENは、調達という専門分野から、「利益を生む人をどう育てるか」という視点で、
人材育成をお手伝いしています。
技術者が原価を語れる会社は、強い。
それが、30年以上現場を見続けてきた私の、変わらない確信です。
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