部品加工会社から「工程ごと任せられるパートナー」へ
従業員約40名の機械加工会社、K社様。
確かな加工技術を持ちながら、受注の中心は図面に基づく部品加工でした。
要求された部品を、品質と納期を守って納める。
その仕事を着実に積み重ねてきましたが、顧客から見れば、同じような設備と加工技術を持つ会社はほかにもあります。
見積もりのたびに比較され、最後は価格で判断される。
技術力はあるのに、その違いを十分に伝えられない。
K社様が抱えていたのは、単なる受注不足ではありませんでした。
このまま部品加工だけを続けていて、将来も選ばれる会社でいられるのか
という、事業の先行きに対する不安でした。
加工技術があっても、価格競争から抜け出せない
K社様の現場には、高い加工技術と経験を持つ人材がいました。
しかし、顧客から渡された図面どおりに部品を加工して納めるだけでは、その技術の価値が価格以外で評価されにくくなります。
実際、営業現場では次のような課題がありました。
- 相見積もりになると価格勝負になりやすい
- 顧客からは数ある加工先の一社として見られる
- 自社の技術を、顧客の利益につながる形で説明できない
- 新しい設備を導入しても、競合との差が長く続かない
- 受注を増やすには、単価を下げるしかないように感じる
そこで必要だったのは、加工価格をさらに下げることではありません。
K社様が顧客に提供する価値そのものを、広げることでした。
RE:GENが着目したのは、納品した後の工程だった
K社様の加工現場や取引状況を確認する中で、RE:GENが着目したのは、K社様が納めた部品のその後でした。
顧客側では、複数の会社から購入した部品を集め、社内または別の委託先で組立を行っていました。
つまり顧客は、
- 複数の部品を別々に発注する
- 各社の納期を管理する
- 納品された部品を受け入れる
- 欠品や不具合を調整する
- 組立先へ部品を供給する
- 完成後の品質を確認する
という多くの管理業務を抱えていました。
K社様は、その中の一部品だけを納めていました。
しかし、K社様の設備、技術、人員、工場スペースを詳しく確認すると、部品加工だけでなく、その先の組立工程まで取り込める可能性が見えてきました。
そこでRE:GENから提案したのが、
部品を一つ納める会社ではなく、必要な部品を集め、組み立てた状態で納める会社になる
という方向でした。
「組立を受注する」だけでは進まない
組立工程を取り込むといっても、単に顧客へ「組立もできます」と伝えるだけでは仕事にはなりません。
組立を任せてもらうためには、K社様が加工していない部品も含め、必要な部材を安定してそろえる必要があります。
また、組立手順、品質基準、検査方法、納期、責任範囲なども明確にしなければなりません。
そこで、次の三つの取り組みを進めました。
1.顧客の組立工程を分解する
まず、顧客がどのような部品を集め、どの順番で組み立てているのかを整理しました。
- 必要な部品点数
- 各部品の調達先
- 組立手順
- 使用する治具や工具
- 必要な技能
- 検査項目
- 組立にかかる時間
- 不具合が起きやすい箇所
を確認し、K社様が引き受けられる範囲を見極めました。
すべての工程を一度に取り込むのではなく、自社の技術や管理能力で安定して対応できる範囲から始めることが重要でした。
2.不足する部品の調達ルートをつくる
組立工程を引き受けるには、K社様が自社で加工できない部品も必要になります。
そこでRE:GENは、必要な部品を整理し、既存の取引先だけで対応できるかを確認しました。
対応できないものについては、新たなサプライヤーを調査しました。
選定で見たのは、価格だけではありません。
- 必要な品質を満たせるか
- 指定数量に対応できるか
- 納期を安定して守れるか
- 不具合発生時に対応できるか
- K社様と継続して取引できるか
まで確認しました。
これにより、K社様は自社で加工する部品だけでなく、外部から購入する部品もまとめて管理できる体制を整えました。
3.顧客にとっての価値へ言い換える
K社様が伝えるべきことは、
当社では組立もできます
だけではありませんでした。
顧客にとって重要なのは、K社様が組立を行うことで、何が変わるかです。
そこで提案内容を、次のように整理しました。
- 発注先を減らせる
- 部品の納期管理を一本化できる
- 欠品や組み合わせ不良をK社様側で確認できる
- 顧客社内の組立作業を減らせる
- 完成した単位で受け入れられる
- 不具合発生時の窓口を一本化できる
- 顧客が本来注力すべき工程へ人員を振り向けられる
つまり、K社様が提供するのは組立作業そのものではありません。
顧客が抱えていた調達と工程管理の負担を引き受けることでした。
部品供給会社から、工程を任される会社へ
取り組みの結果、K社様は単品の加工部品を納めるだけの会社から、複数の部品を調達し、組み立てた状態で納める会社へと役割を広げました。
これにより、顧客との関係も変わりました。
以前は、図面と数量を受け取り、見積もりを提出する関係でした。
組立工程を引き受けた後は、
- 生産計画
- 部品の調達状況
- 組立方法
- 品質上の課題
- 今後の増産対応
などについて、顧客とより深く話し合うようになりました。
K社様は、価格を比較される一つの加工先ではなく、顧客の生産を支えるパートナーへと変わっていったのです。
売上は前年比120%超へ
組立工程を取り込んだことで、K社様の受注範囲は大きく広がりました。
自社加工品だけでなく、外部から調達する部品や組立作業も売上に加わり、対象取引の売上は前年比120%を超えました。
ただし、売上が増えた理由は、単に仕事量が増えたからではありません。
これまで顧客側や別の委託先で行われていた工程を、K社様がまとめて引き受けられるようになったことが大きな要因です。
一つの部品で得ていた売上から、一つの工程全体で価値を提供する売上へ。
受注の単位そのものが変わりました。
顧客から「有力パートナー」として表彰
K社様の取り組みは、顧客からも評価されました。
部品加工だけでなく、調達、組立、品質管理まで含めて顧客の負担を減らしたことが認められ、K社様は顧客から有力パートナーとして表彰を受けました。
表彰は、単に納期や品質を守ったことだけへの評価ではありません。
顧客が抱える工程上の課題を理解し、自社の役割を広げて解決したことへの評価でした。
「依頼されたものを作る会社」から、
顧客の困りごとを見つけ、工程ごと解決できる会社
へ変わったことが、成果につながりました。
内製化すれば、必ず利益が増えるわけではない
組立工程を取り込めば、売上は増えます。
しかし、仕事を広げれば必ず利益も増えるとは限りません。
新たに必要となる部品の購入費、組立人員、作業スペース、治具、検査、在庫、管理工数などが増えるからです。
そのため、今回の取り組みでは、
- どこまでを自社で行うか
- どの工程を外部へ任せるか
- 部品をいくらで調達するか
- 組立作業にどれだけ時間がかかるか
- 不具合時の責任をどう分けるか
- 売価に必要な費用と利益を反映できるか
を確認しながら進めました。
売上を増やすだけでなく、事業として継続できる収益構造をつくる必要があります。
工程を取り込むことは、単なる内製化ではありません。
新しい調達と生産の仕組みを、自社の中につくることです。
本当の強みは、すでに持っている技術の使い方にある
K社様は、支援を始める前から高い加工技術を持っていました。
新しい価値が生まれたのは、まったく新しい技術を手に入れたからではありません。
すでに持っていた設備、加工技術、人材、品質管理力を、顧客の組立工程という別の課題へ使ったからです。
中小製造業には、自社では当たり前だと思っている技術や対応力があります。
しかし、その強みを、
顧客のどの負担を減らせるか
顧客のどの工程を引き受けられるか
顧客にどのような利益をもたらせるか
という視点で見直さなければ、価値として伝わりません。
強みは、社内にあるだけでは売上になりません。
顧客の課題と結びついたときに、初めて選ばれる理由になります。
RE:GENの視点――調達は、売上を増やすためにも使える
調達改善というと、購入価格を下げる活動だと思われがちです。
しかし、調達の役割はコスト削減だけではありません。
新しい部品を安定して調達できれば、自社で引き受けられる工程が増えます。
外部の技術や供給力を組み合わせれば、自社だけでは提供できなかった価値を顧客へ提案できます。
つまり調達は、
自社の提供範囲を広げ、新しい売上をつくるための機能
にもなります。
K社様の事例では、調達ルートを整えたことで組立工程を取り込めるようになり、部品加工会社から工程提案型のパートナーへ役割を広げることができました。
これは単なるコスト削減ではありません。
調達から、会社の新しい稼ぎ方をつくった事例です。
まとめ――部品ではなく、顧客の工程を見る
今回の事例では、K社様が顧客の組立工程を取り込み、対象取引の売上前年比120%超を達成しました。
さらに、顧客の負担軽減と安定供給への貢献が評価され、有力パートナーとして表彰を受けました。
出発点は、
もっと部品を売るにはどうすればよいか
ではありませんでした。
顧客は、部品を受け取った後に何に困っているのか
という問いでした。
顧客が欲しいのは、加工された部品そのものとは限りません。
必要な部品がそろい、品質が確認され、すぐに使える状態で届くことかもしれません。
自社の技術だけを見るのではなく、その技術を顧客の工程のどこで役立てられるかを見る。
そこに、価格競争から抜け出す入口があります。
RE:GENは、30年以上の調達経験をもとに、企業が持つ技術や設備を整理し、新しい調達ルートの構築、内外製の設計、顧客への提案づくりまで支援します。
「加工だけでは価格競争から抜け出せない」
「顧客へ新しい価値を提案したい」
「自社の設備や技術を、別の売上につなげたい」
そのような課題があれば、まずは顧客へ納めた後の工程まで、一緒に見直します。
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