【実績事例】技術は教えていた。利益は教えていなかった

初めての定期採用を機に、新人教育を仕組み化したH社様の事例

「初めて定期採用を行うことになりました。でも、何をどう教えればよいのか分かりません」

H社様から最初にいただいたご相談は、新入社員教育についてでした。

H社様は、高い技術力を持ち、多くの顧客から信頼を得ている製造企業です。

これまでは、必要な人材をその都度採用し、先輩が現場で仕事を教えてきました。

加工の方法。

設備の扱い方。

図面の見方。

品質上の注意点。

技術は、日々の仕事の中で先輩から後輩へ受け継がれていました。

しかし、事業拡大に伴って初めて定期採用を行うことになり、複数の新入社員を計画的に育てる必要が生まれました。

これまでのように、

現場へ入れば、そのうち仕事を覚える

だけでは、教育する人によって伝える内容が変わります。

会社として何を大切にしているのか。

なぜ、この仕事が必要なのか。

新人にどのような社員になってほしいのか。

それらを、共通の言葉で伝える仕組みが必要でした。

H社様の教育にあった、一つの空白

お話を伺いながら、現場の教育内容を確認していく中で、一つの空白が見えてきました。

技術は教えている。

品質についても教えている。

しかし、

その仕事が、会社の利益とどうつながっているのか

は、ほとんど教えられていませんでした。

図面に一本の線を加えること。

材料を一つ選ぶこと。

加工時間を数分短縮すること。

不良を一つ防ぐこと。

仕入先へ一度発注すること。

現場では小さく見える一つひとつの判断が、最終的には会社の原価と利益を決めています。

それでも新人にとっては、自分の仕事と会社の利益は、遠く離れたものに見えます。

言われた図面どおりに作る。

指示された材料を発注する。

決められた作業を終える。

それだけでは、

なぜ、この仕事をするのか
自分の判断が会社へ何をもたらすのか

までは見えてきません。

H社様に必要だったのは、作業を教える研修だけではありませんでした。

自分の仕事が会社の利益と未来につながっていることを理解できる教育でした。

新人教育の課題は、研修資料がないことだけではなかった

H社様では、主に次の課題がありました。

  • 新人教育がOJT中心で、教える内容が担当者によって異なる
  • 会社の理念や、ものづくりへの考え方を伝える場がない
  • 技術と原価・利益の関係を学ぶ機会がない
  • 仕入れや発注を担う若手社員の育成方法が決まっていない
  • 新人が会社の将来を自分事として考える機会がない

技術力や設備が不足していたわけではありません。

むしろ、すでに強い技術があるからこそ、

その技術を、どう会社の利益へつなげるのか

を理解する人材を育てる必要がありました。

そこでRE:GENは、この支援を単なる新人研修ではなく、

利益を生む人材を育てるための、教育の土台づくり

として設計しました。

RE:GENが設計した二つの教育

今回の教育は、大きく二つに分けました。

一つは、新入社員が自分の仕事と会社の利益のつながりを理解するための教育。

もう一つは、仕入れや発注を担う若手社員が、調達を通じて利益を守るための教育です。

1.新入社員に「仕事と利益のつながり」を伝える

新入社員向けの講義では、難しい会計知識を覚えてもらうことを目的にはしませんでした。

最初に伝えたのは、

会社は、売上が増えれば自動的に強くなるわけではない

ということです。

製品を売った金額から、材料費、加工費、人件費、設備費などが差し引かれ、最後に利益が残ります。

そして、その原価を決めているのは、経営者や経理担当者だけではありません。

設計、調達、製造、品質。

すべての仕事が原価に影響しています。

たとえば、設計者が必要以上に高価な材料を選べば、材料費は上がります。

加工しにくい形状にすれば、加工時間や不良の可能性が増えます。

製造現場で段取り時間を短縮できれば、加工費を抑えられます。

調達担当者が発注ロットを適切に設計すれば、単価と在庫の両方を改善できます。

一人ひとりの仕事が、利益に直結しているのです。

理論原価から「なぜこの仕事をするのか」を考える

講義では、理論原価の考え方も扱いました。

理論原価とは、

その製品は、本来いくらでつくれるのか

を、材料、加工時間、工程、歩留まりなどから積み上げて考えるものです。

新人に精密な原価計算を求めたわけではありません。

大切なのは、

原価は、経理部門が後から集計する数字ではなく、現場の判断によってつくられている

と理解してもらうことでした。

図面の一本の線。

材料の選び方。

工具の使い方。

段取りの工夫。

不良を出さない確認。

それらが積み重なって、製品の原価になります。

自分の仕事を「指示された作業」として見るのではなく、

この仕事は、品質と利益にどのような影響を与えるのか

と考える視点を持ってもらいました。

2.若手バイヤーに「発注の先にある利益」を伝える

もう一つの対象は、仕入れや発注を担当する若手社員でした。

購買業務は、注文書を発行するだけの仕事ではありません。

  • この価格は妥当か
  • この数量で発注してよいか
  • 在庫が増えすぎないか
  • この仕入先へ依存してよいか
  • 品質と納期を継続して守れるか
  • 値下げ以外に改善できる条件はないか

を考える仕事です。

価格だけを見て最も安い会社へ発注すれば、品質不良や納期遅延によって、会社全体のコストが増えることがあります。

反対に、以前からの取引だからという理由だけで発注を続けていれば、価格や条件が硬直することもあります。

若手社員には、発注することそのものではなく、

なぜ、その会社から、その条件で買うのか

を説明できることが、バイヤーの役割だと伝えました。

研修では、答えを教えるだけにしなかった

講義を聞くだけでは、学んだ内容は現場から切り離されたままになります。

そこでワークショップでは、

H社様の未来を、自分たちならどうつくるか

をテーマに話し合ってもらいました。

H社様の強みは何か。

今後、どのような顧客から選ばれたいか。

技術をどのように次の世代へつなぐか。

利益を残すために、どのような改善が必要か。

新人や若手が、自分たちの言葉で考えました。

経営者から正解を教えてもらうのではありません。

会社の未来に対して、自分も意見を持ってよい。

その経験が、会社を自分事として考える入口になります。

「なぜこの会社で働くのか」を考える時間

新人教育では、仕事の方法を教えることが優先されます。

もちろん、それは必要です。

しかし、方法だけを教えられた新人は、

自分は何のために、この仕事をしているのか

を理解できないまま働くことがあります。

技術を身につけること。

品質を守ること。

原価を意識すること。

顧客へ価値を届けること。

会社に利益を残し、次の設備や人材へ投資できるようにすること。

それらが一本につながったとき、

なぜ、この会社で働くのか
自分の仕事が、会社のどこを支えているのか

が見えてきます。

今回の研修で目指したのは、仕事の知識を増やすことだけではありませんでした。

自分が会社の未来をつくる一人であると理解してもらうことでした。

成果――利益という言葉が、現場の会話に加わった

研修後、H社様からは、

若手社員が、自分の仕事と原価のつながりについて話すようになった

という変化を伺いました。

これは、研修の内容を覚えていたということだけではありません。

それまで別々に見えていた、

  • 技術
  • 品質
  • 原価
  • 利益
  • 会社の未来

が、社員の中で少しずつつながり始めたということです。

また、教育を担当する側にとっても、

新人に何を伝えるべきか

が整理されました。

技術の教え方だけではなく、会社の考え方や、その仕事の意味まで伝える必要があると共有できたことは、今後の教育を継続するための土台になりました。

人材育成は、一度の研修で完成しない

今回の研修によって、すべての教育課題が解決したわけではありません。

新人は、これから現場で経験を積みます。

若手バイヤーも、実際の見積もり、発注、交渉、トラブルを経験しながら成長します。

一度の講義だけで、人の考え方が完全に変わるわけではありません。

だからこそ大切なのは、研修で使った言葉が、その後の現場でも繰り返されることです。

この判断は、原価にどう影響するのか
この改善は、顧客と会社にどのような価値を生むのか
なぜ、このやり方を選ぶのか

を、上司や先輩が日常の仕事の中で問い続ける。

研修を単発の行事で終わらせず、現場の会話へつなげることで、人材育成は仕組みになります。

RE:GENの視点――技術と利益を結びつける人を育てる

製造業では、技術教育が重視されます。

高い技術を身につけることは、会社の競争力を支える大切な要素です。

しかし、技術が高いだけで、自動的に利益が生まれるわけではありません。

利益だけを優先し、技術や品質を軽視すれば、会社の信頼は失われます。

必要なのは、

技術を守りながら、その技術を会社の利益へつなげられる人

です。

設計者が原価を考える。

製造担当者が品質と生産性を考える。

バイヤーが価格だけでなく、供給と利益を考える。

一人ひとりが自分の仕事を、会社全体の流れの中で捉える。

そのような人材が増えた会社は、強くなります。

まとめ――技術者が原価を語れる会社は、強い

今回の事例では、初めて定期採用を行ったH社様に対し、新入社員教育と若手バイヤー教育を設計しました。

新人には、自分の仕事が会社の原価と利益につながっていることを伝えました。

若手バイヤーには、発注が会社の利益と供給を守る仕事であることを伝えました。

そしてワークショップを通じて、H社様の未来を自分たちで考える機会をつくりました。

技術は、教えることができます。

原価の仕組みも、説明できます。

しかし本当に育てたいのは、

自分の技術と判断が、会社の未来にどうつながるかを考えられる人

です。

技術者が原価を語れる会社は、強い。

それが、30年以上にわたり調達と製造業の現場を見てきたRE:GENの確信です。

RE:GENは、調達という専門分野を入口に、新入社員研修、若手バイヤー育成、原価教育、社内ワークショップなどを支援しています。

「初めて新人教育を仕組み化したい」

「技術だけでなく、利益を意識できる人材を育てたい」

「若手バイヤーに、発注の先にある判断力を身につけてほしい」

そのような課題があれば、会社として新人へ何を伝えるべきかを整理するところから、一緒に考えます。

「ちょっと話を聞いてみたい」でも大歓迎です。
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