最近のバイヤーは質が落ちた──現場が突きつける調達の原点と企業変革の急務

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1. 「最近のバイヤーは質が落ちた」
──その一言が突きつける日本製造業の深層

ある日、長く付き合いのある部品メーカーの営業責任者から、こんな言葉を聞きました。
最近のメーカーのバイヤーは、質が落ちたね。

その一言に、私は息をのみました。単なる愚痴ではありません。
長年ものづくりの現場を見てきた人間だからこそ分かる、
変化への違和感が滲んでいました。
この言葉の裏には、いまの日本製造業が抱える、
調達とサプライヤー双方に共通する本質的な課題が隠されています。


2. 「質が落ちた」とは何を指すのか
──失われた「現場理解」と「共創意識」

ここでいう「質」とは、単に知識やスキルが劣るという話ではありません。
調達のプロとして私たちが現場で感じるのは、以下のような「姿勢」の変化です。

  • 現場理解の欠如: 図面やデータは読むが、工程や加工の勘所を理解しようとしない。
    サプライヤーの「この加工は、こうしないと無理なんです」という声に耳を傾けず、
    ただ社内要求を横流しする。
  • 一方的な評価軸: 相手を尊重し、共に改善を進めようとする意識が希薄。
    価格交渉に終始し、長期的な信頼構築や技術開発の視点がない。
  • 問題解決の丸投げ: トラブル発生時、原因究明をサプライヤーにすべて押し付け、
    自社での関与や協力体制を示さない。

かつての調達担当者は、図面を片手にサプライヤーを訪ね、
現場で共に試作や改善を行いながら、どうすれば互いに利益を出せるかを考えていました。
そこには、“育て合う関係”が確かに存在したのです。


3. メーカーが失った「共育の循環」
──「評価だけできるバイヤー」の量産

「おこがましいけど、昔のメーカーとは“育てる関係”だったんですよ。
一緒に新しい挑戦をして、うまくいけばお互いに得をする。そんな関係でした。」

その営業責任者の言葉は、日本のものづくりを支えてきた「共創の循環」が失われつつある現状を浮き彫りにします。メーカーはサプライヤーの技術力を引き出し、
サプライヤーはそこから新しいノウハウと信用を得る。
そうして共に成長し、イノベーションを生み出していました。

しかし今、多くのメーカーが「すでに完成されたサプライヤー」を求め、
現状に安住し、挑戦や共育よりも「安定」と「効率」を過度に優先するようになっています。
結果、調達担当者も「評価だけできる人」が増え、
現場で汗をかく“本物のバイヤー”が育たなくなってしまったのです。


4. サプライヤーもまた、原点を見失い「利」に走る

課題はメーカー側だけではありません。
サプライヤー(つくる側)にも、同様の変化が起きています。

かつては「挑戦」と「信用」を大切にしていた企業が、
今では「利益」と「安定」を最優先にする傾向が強まっています。

  • 技術的な妥協: 数が出る製品を、不釣り合いな設備や技術で作り続け、目先の利益を追う。
  • 個性の喪失: 得意技術を磨くよりも、“他社と同じ”方向に流れていき、差別化を放棄する。
  • コモディティ化の加速: 結果として個性が失われ、価格競争に巻き込まれる悪循環に陥る。

RE:GENが活動の中心に置く「利は元にあり」“利”だけが独り歩きし、
“元”──すなわち「技術への誇り」「挑戦する姿勢」「顧客への貢献」という原点が
置き去りにされているのです。


5. 日本の中小製造業を蝕む「後継者問題」と「サラリーマン社長」意識

さらに深刻なのが、多くの中小製造業で深刻化する後継者問題です。
創業者の意思を継いだ二代目・三代目社長の多くは、
かつての“丁稚奉公”のように社内で叩き上げてきた人たちです。
誠実で努力家ではありますが、経営者というより
“雇われ社長(サラリーマン社長)”としての意識を強く持たざるを得ない場合があります。

つまり、自分の判断よりも「オーナーへの報告」や「会社の体裁」を優先する構造です。
結果、どうしても「オーナーに良い顔をする」ことが第一のミッションになってしまい、
知らず知らずのうちに「利益至上主義」が根づいていきます。

さらに難しいのは、前の経営者の心理です。
経営を引き継いだ後継者に気をつかい、「自由にやってくれていい」と言っているので、
実際にはうまくいかない現場を見ても口を出せない。
なにせ“売上は立っている”ため、数字上は問題がないように見えてしまうのですから。

そして本音を言えば、多くのオーナーは“子息に大政奉還してもらいたい”と願っています。
自分から譲るのではなく、「あとは俺がやるよ」と自然に言ってもらうのを、
どこかで待っているのです。
けれど、その頃には会社の“見えない健康値”はすでにサラリーマン社長によりズタズタ。
数字は黒字でも、技術への誇りや顧客との信頼という「血流」が止まりかけている
私はそんな現場を、いくつも見てきました。


6. 「働き方改革」と「人材不足」がもたらす「関係性」の空洞化

時代の流れも、この構造変化を加速させています。

働き方改革、ワークライフバランス、そして深刻な人材不足。
これらは必要な改革ですが、その副作用として「人と人との関係づくり」「現場理解」の機会が激減してしまった現実があります。

  • 現場訪問の機会減: バイヤーが現場に足を運ぶことが、時間的・コスト的に難しくなった。
  • 「共育」時間の削減: 定時退社が優先され、サプライヤーとの試作・立ち合いといった、共に汗をかく時間が削られた。
  • 経験の希薄化: 異動サイクルが早まり、バイヤーが特定のサプライヤーや技術領域に関する熟練の感覚を継承しにくい。

結果として、「関係の浅いバイヤー」と「無難な提案しかしないサプライヤー」ばかりが残り、かつてのような“魂の通う取引”は希薄になってしまいました。
働き方改革は「働く人を守る」ためのものですが、
ものづくりの現場では、“人と人の関係”を守る力まで奪いかねないという、
皮肉な現実がここにあります。


7. RE:GENの視点
──今こそ「調達の原点」を取り戻し、企業体質を強化する

RE:GENが大切にしているのは、まさにこの「原点」です。

調達は単なる購買活動ではありません。
それは、サプライヤーの強みを引き出し、共に技術を高め、未来を共創する
「経営の航海士」であるべきだと考えています。

「バイヤーの質が落ちた」という声は、私たち自身の問題提起でもあります。
バイヤーが再び現場に目を向け、真のパートナーシップを再構築すること。
サプライヤーが自らの“元”を見つめ直し、技術への誇りと挑戦する姿勢を取り戻すこと。

「利は元にあり」──この言葉を、再び“実践の言葉”にするとき、
企業間の信頼関係は必ず再び強くなります。
RE:GENは、調達を単なるコスト削減ツールではなく、
企業が原点回帰し、持続的な利益体質を築くための「経営戦略」として活用できるよう、
強力に支援していきます。


まとめ:原点回帰が、日本ものづくりを強くする

「バイヤーの質が落ちた」と言われる時代は、
私たち全員がものづくりの「原点」を見つめ直す好機です。

バイヤーもサプライヤーも、そして経営者も。
「利は元にあり」という普遍の思想をもう一度実践することで、
日本のものづくりは必ず強く、しなやかに蘇ります。

RE:GENと共に、貴社の「調達力」を「経営力」へと変革しませんか?

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