「どの仕入先から買うか」は、企業の競争力を大きく左右します。
価格が安い。
品質がいい。
納期を守ってくれる。
もちろん、どれも重要です。
しかし実際の調達では、それだけで仕入先を評価すると判断を誤ることがあります。
たとえば、
価格は安いが、不具合対応が遅い。
品質は高いが、供給能力に余裕がない。
技術力はあるが、経営状態が不安定。
こうしたサプライヤーもあります。
だからこそ必要なのが、複数の視点から仕入先を見るサプライヤー評価です。
メーカーの調達部門では一般的な仕組みですが、中小製造業でも、すべてを大掛かりに始める必要はありません。
まずは、自社にとって重要な項目を決めて、同じ物差しで仕入先を見る。
それだけでも、調達判断はかなり変わります。
サプライヤー評価とは
サプライヤー評価とは、仕入先を価格だけで判断するのではなく、
- 品質
- コスト
- 納期
- 対応力
- 経営安定性
- 技術力・改善力
など、複数の観点から継続的に評価する仕組みです。
目的は、仕入先に順位をつけることではありません。
本当に確認したいのは、
この会社に、これからも安心して仕事を任せられるか
ということです。
そのため、評価は「取引開始時」だけで終わらせず、取引実績を踏まえて定期的に見直す必要があります。
1.品質 ―― 不良率だけを見ない
サプライヤー評価で最初に見るのは品質です。
ただし、
不良率が低いから品質がいい
だけでは十分ではありません。
見るべきなのは、品質を安定して維持できる仕組みがあるかどうかです。
たとえば、
- 品質管理の仕組みがあるか
- 検査基準が明確か
- 検査記録を残しているか
- 工程変更を管理できているか
- 不具合発生時の初動が早いか
- 原因分析と再発防止ができるか
- 同じ不具合を繰り返していないか
などです。
一度も不良を出していない会社よりも、不具合が発生したときに正確に原因を特定し、再発防止までやり切れる会社の方が、長期的には信頼できる場合があります。
品質は「結果」だけでなく、管理能力まで見ることが重要です。
2.コスト ―― 単価だけで判断しない
価格は重要です。
しかし、
一番安い会社=一番良い仕入先
とは限りません。
調達で見るべきなのは、単価ではなく総コストです。
たとえば、
- 材料費
- 加工費
- 金型・治具費
- 物流費
- 検査費
- 不良対応費
- 特急対応費
- 在庫費
- 管理工数
まで含めると、見積単価が安い会社の方が、結果的に高くつくこともあります。
また、
- 見積根拠を説明できるか
- 市況変化を価格へ適切に反映しているか
- 原価改善の提案があるか
- 値下げだけでなく、仕様や工程から改善を考えられるか
も重要です。
価格を見るのではなく、
その価格に、きちんと理由があるか
を見ることが、調達の役割です。
3.納期 ―― 「納期遵守率」の中身を見る
製造業では、納期が遅れると自社の生産まで止まります。
そのため、
- 納期遵守率
- リードタイム
- 突発的な数量変更への対応
- 特急対応力
- 生産能力
- 繁忙期の対応
などを確認します。
ただし、納期遵守率100%だから安心、とも限りません。
無理な納期要求を毎回受けているだけかもしれません。
逆に、早い段階で、
この納期では難しいです
と正直に伝えてくれる会社の方が、調達側としては管理しやすいこともあります。
納期評価で重要なのは、
約束した納期を守れることと、守れないときに早く知らせること
の両方です。
4.対応力 ―― 「レスが早い」だけではない
サプライヤー評価では、対応力も重要です。
たとえば、
- 見積回答が早い
- 問い合わせへの返答がある
- 問題発生時に逃げない
- 変更依頼へ柔軟に対応する
- 社内で必要な人につないでくれる
- 説明が分かりやすい
などです。
ただし、
何でも「できます」と答える
会社が、対応力の高い会社とは限りません。
本当に信頼できるのは、
できること
できないこと
条件があればできること
を正確に伝えられる会社です。
調達にとって重要なのは、愛想の良さではありません。
必要な情報が、必要なタイミングで正確に届くことです。
5.経営安定性 ―― 今の取引だけでなく、5年後も見る
品質や価格が良くても、サプライヤーそのものが事業を継続できなければ、供給は止まります。
特に、
- 特注品
- 専用金型
- 代替先が少ない部品
- 長期間使用する製品
では、仕入先の経営安定性が重要です。
確認したいのは、
- 財務状況
- 売上・利益の推移
- 借入状況
- 特定顧客への依存度
- 後継者の有無
- 人材確保
- 設備更新
- 災害リスク
- 生産拠点の集中
などです。
特に中小製造業では、
社長が高齢だが後継者がいない
特定の熟練者しか加工できない
設備更新が止まっている
といった情報が、将来の供給リスクになります。
経営安定性とは、決算書を見るだけではありません。
この会社が、これからも供給を続けられるかを見ることです。
6.技術力・改善力 ―― 「今できること」だけを見ない
技術力というと、
- どんな加工設備を持っているか
- どの程度の精度まで加工できるか
- ISO認証を取得しているか
などを見がちです。
もちろん、それも重要です。
しかし、より大切なのは、
将来、一緒に改善できる会社か
という視点です。
たとえば、
- VA・VE提案ができる
- 材料変更を提案できる
- 工程短縮を考えてくれる
- 自動化・省人化に取り組んでいる
- 新技術を紹介してくれる
- 設計段階から相談に乗れる
といった力です。
サプライヤーの価値は、今ある設備だけでは決まりません。
一緒に考え、一緒に変われる力も重要な評価項目です。
サプライヤー評価は点数をつければ終わりではない
評価表をつくると、
品質20点。
コスト20点。
納期20点。
と点数をつけたくなります。
それ自体は悪くありません。
しかし、ここで一つ注意が必要です。
すべての仕入先を、同じ配点で評価する必要はありません。
たとえば、
量産部品なら、
- 品質
- コスト
- 納期
の比重が高くなるかもしれません。
新製品の試作なら、
- 技術力
- 提案力
- 対応力
が重要になるでしょう。
供給リスクの高い重要部品なら、
- 経営安定性
- BCP
- 生産能力
を重く見る必要があります。
つまり、
何を買うかによって、評価の重みは変わる
ということです。
「良いサプライヤー」ではなく「自社に合うサプライヤー」を探す
サプライヤー評価で最も大切なのは、点数の高い会社を探すことではありません。
たとえば、世界トップクラスの設備を持つ会社でも、小ロットの細かな仕事を嫌うかもしれません。
逆に、小規模な町工場でも、
- 小ロット対応
- 特急対応
- 試作
- 柔軟な変更対応
では非常に強い場合があります。
大切なのは、
自社が何を求めているのか
を先に明確にすることです。
そのうえで、
この仕事を任せるなら、どの会社が最も合っているか
を見る。
サプライヤー評価とは、会社の優劣を決める仕組みではありません。
仕事と会社の相性を見る仕組みでもあります。
評価結果は、仕入先にも返す
評価して終わりでは、サプライヤー評価の価値は半分しかありません。
できれば、
品質は高く評価しています。
ただ、納期回答をもう少し早くしてほしい。
技術力は高いですが、改善提案がもう少し欲しい。
と、評価結果をフィードバックします。
すると、仕入先側も、
何を改善すれば、取引を増やせるのか
が分かります。
一方的に点数をつけるだけではなく、評価を改善につなげる。
そのサイクルができると、サプライヤー評価は「査定」から「育成」に変わります。
RE:GENの視点――サプライヤー評価は、取引先を切るための道具ではない
サプライヤー評価という言葉には、
悪い会社を見つけて切る
という印象があるかもしれません。
しかし、本来の目的は違います。
この会社の強みは何か。
何が弱いのか。
どんな仕事なら力を発揮できるのか。
どこを改善すれば、もっと良いパートナーになれるのか。
それを見えるようにすることです。
調達側にも責任があります。
安さだけを求め続けておきながら、
改善提案がありません
と評価しても仕方がありません。
短納期ばかり要求しておきながら、
納期が不安定です
と点数を下げても、問題の本質は見えません。
サプライヤー評価は、相手だけを見る仕組みではありません。
自社が、どんな取引をしているのかを映す鏡でもあります。
まとめ――サプライヤー評価は「選ぶ」ためだけではない
サプライヤー評価では、
- 品質
- コスト
- 納期
- 対応力
- 経営安定性
- 技術力・改善力
といった複数の視点で見ることが重要です。
しかし、単純に点数をつけるだけでは十分ではありません。
何を買うのか。
どんなリスクがあるのか。
自社は何を重視するのか。
それによって評価項目や配点を変える必要があります。
そして評価結果を、取引先との改善活動へつなげる。
そうすることで、
サプライヤー評価=取引先を選別する仕組み
ではなく、
サプライヤーと一緒に取引を強くする仕組み
に変わります。
仕入先を「単なる供給元」として見るのではなく、共に成長するパートナーとして見る。
そのための共通言語が、サプライヤー評価なのだと思います。
「ちょっと話を聞いてみたい」でも大歓迎です。
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