不具合の潰し方には、その会社の経営力が表れる。──発注者として多くの現場を見てきたRE:GENが、封じ込めから再発防止までの実務手順を整理します。
「まず何をすればよいのか」
「顧客には、どこまで報告すればよいのか」
「原因は調べたが、再発防止策に自信がない」
と迷うことがあります。
不具合対応で大切なのは、いきなり原因を探し始めることではありません。
まず被害の拡大を止め、影響範囲を把握し、事実を整理する。
そのうえで、発生原因と流出原因を分け、恒久対策と水平展開まで進めます。
基本となる流れは、次の8段階です。
発生
↓
封じ込め
↓
初動報告
↓
原因分析
↓
暫定対策
↓
恒久対策
↓
効果確認
↓
水平展開・完了
本記事では、不具合に対応するサプライヤー側と、報告を受ける発注側の双方が使えるように、不具合発生から再発防止までの実務手順を整理します。
不具合対応は、原因究明より「封じ込め」が先
不具合が発生すると、すぐに、
なぜ起きたのか
を調べたくなります。
もちろん、原因究明は必要です。
しかし、初動で最優先すべきなのは、原因を突き止めることではありません。
これ以上、不具合品をつくらない。出さない。広げない。
この状態をつくることです。
原因分析に時間を使っている間にも、同じ条件で生産が続いていれば、不具合品が増えている可能性があります。
すでに出荷済みであれば、顧客の生産や市場へ影響が広がるかもしれません。
不具合を確認したら、まず次の行動を取ります。
- 対象工程や設備を止める
- 対象品の出荷を止める
- 社内在庫と仕掛品を隔離する
- 出荷済みのロットを確認する
- 同じ材料・設備・条件で生産した製品を特定する
- 必要に応じて選別や代替品の準備を始める
原因が分からない段階でも、被害を広げないための暫定処置はできます。
不具合対応の第一歩は、原因分析ではなく封じ込めです。
初動報告で確認すべき5項目
初動報告の目的は、完成した原因報告書を提出することではありません。
顧客や社内関係者が、次に何を判断すべきか分かる状態をつくることです。
原因がまだ分からない場合は、分からないことを無理に埋める必要はありません。
確認できた事実と、現在調査中の内容を分けて伝えます。
1.何が起きているのか
まず、不具合の現象を具体的にします。
- 寸法が規格を外れている
- 傷や変形がある
- 組み付かない
- 動作しない
- 異物が付着している
- 表面処理にムラがある
「品質不良が発生した」という表現だけでは、状況は伝わりません。
品番、数量、ロット、発生場所、発見日時、写真、測定値などを整理します。
2.影響はどこまで広がっているのか
次に、波及範囲を確認します。
- 発見された1個だけなのか
- 同一ロット全体に可能性があるのか
- 前後の生産ロットにも影響するのか
- 社内在庫や仕掛品に含まれているのか
- すでに顧客へ出荷されているのか
- 同じ設備や材料を使う別製品にも可能性があるのか
この段階で重要なのは、影響範囲を小さく見せることではありません。
不明な範囲を含め、どこまで確認する必要があるかを明確にすることです。
3.どのような暫定処置を行ったのか
被害の拡大を止めるために、何を行ったかを報告します。
- 出荷停止
- 生産停止
- 在庫隔離
- 全数選別
- 条件変更
- 代替品の手配
- 顧客在庫の確認
- 応急修理や再加工
ここでは、恒久的な再発防止策と混同しないことが大切です。
選別を強化することは、流出を止める暫定処置にはなります。
しかし、不具合が発生する原因そのものを取り除いたことにはなりません。
4.いつ復旧できるのか
顧客が最も早く知りたい情報の一つが、復旧の見込みです。
- 選別完了はいつか
- 良品を何個確保できるか
- 代替品をいつ納入できるか
- 再製作には何日かかるか
- 顧客の生産に影響が出るのか
原因が確定していなくても、供給をどう回復させるかは並行して考えなければなりません。
「調査中です」だけでは、顧客は次の判断ができません。
5.現在、どこまで原因を確認できているのか
原因調査では、事実と仮説を分けます。
たとえば、
加工条件が原因だと思われます
ではなく、
不具合品は加工温度が基準より10度高い時間帯に集中しています。現在、条件を再現して確認しています。
と伝えます。
確認に使う情報には、次のようなものがあります。
- 不具合品と正常品の比較
- 寸法や性能の測定値
- 写真や動画
- 製造・検査履歴
- 設備の条件記録
- 使用材料のロット
- 作業者と作業時間
- 金型や治具の状態
- 変更履歴
- 過去の類似不具合
初動報告では、原因を急いで断定するよりも、何が事実で、何をこれから確認するのかを明確にする方が信頼につながります。
不具合発生から再発防止までの8ステップ
ここからは、不具合を一時的に処理するだけでなく、再発しない状態へ変えるための手順を整理します。
ステップ1.不具合の現象を正しく捉える
原因分析の出発点は、「何が悪かったのか」を具体的にすることです。
たとえば、
寸法不良が発生した
だけでは不十分です。
- どの寸法が
- 規格に対してどれだけ外れ
- どの方向へ偏り
- 何個中何個で発生し
- いつから発生しているのか
まで確認します。
現象が曖昧なままでは、原因も曖昧になります。
原因を考える前に、不具合品と正常品の違いを、測定値や現物で捉えることが必要です。
ステップ2.不具合を封じ込める
次に、同じ不具合が社内や顧客へ広がるのを止めます。
この段階では、原因が確定していなくても構いません。
対象ロットだけでなく、前後の生産、同じ設備、同じ材料、同じ作業条件でつくられた製品まで確認します。
封じ込めが甘ければ、最初の報告後に新たな不具合が見つかり、信用をさらに失うことになります。
最初に1個と報告したが、後から20個見つかった
という状況は、不具合そのものだけでなく、管理能力まで疑われる原因になります。
ステップ3.初動報告を行う
初動報告では、すべての原因や対策が決まっている必要はありません。
先ほどの5項目を使い、
- 現象
- 影響範囲
- 暫定処置
- 復旧見込み
- 原因調査の状況
を伝えます。
そして、次の報告日時を決めます。
詳細は分かり次第ご報告します
ではなく、
本日17時までに対象ロットを確定し、明日10時までに選別結果と原因調査の進捗をご報告します
と約束した方が、相手は安心できます。
報告とは、書類を提出することではありません。
関係者が同じ情報を持ち、次の行動を決めるためのものです。
ステップ4.発生原因と流出原因を分ける
不具合品が顧客まで届いた場合、調べるべき原因は一つではありません。
発生原因
なぜ、不具合品がつくられたのか
を調べます。
代表的な要因には、
- 加工条件のずれ
- 設備異常
- 金型や治具の摩耗
- 材料の変化
- 段取り間違い
- 作業方法のばらつき
- 図面や指示の誤り
などがあります。
流出原因
なぜ、不具合品を社内で発見できなかったのか
を調べます。
代表的な要因には、
- 検査項目がなかった
- 検査頻度が不足していた
- 測定方法が適切でなかった
- 判定基準が曖昧だった
- 記録はあったが確認されていなかった
- 異常情報が次工程へ伝わらなかった
- 検査では見つけにくい仕組みだった
などがあります。
発生原因だけを対策しても、別の原因で不具合が発生したときに再び流出する可能性があります。
反対に、検査だけを強化しても、不具合品をつくり続ける工程は変わりません。
発生を止める対策と、流出を止める対策。
この二つを分けて考えることが必要です。
ステップ5.事実を集めて原因を切り分ける
原因分析で最も避けたいのは、事実が足りないまま話し合いを始めることです。
経験のある人ほど、
おそらく作業者のミスだ
この設備は以前も問題を起こしている
材料が変わったからではないか
と、早い段階で原因を決めてしまうことがあります。
しかし、それはまだ仮説です。
原因を絞り込むには、不具合が発生した条件と、発生しなかった条件を比較します。
たとえば、
- 特定の設備だけで発生したか
- 特定の作業者だけで発生したか
- 特定の材料ロットだけか
- 生産開始直後か、連続生産後か
- 温度や速度などの条件に違いがあるか
- 金型や工具の使用回数に関係があるか
- 正常品と不具合品で何が違うか
を整理します。
4Mで整理する方法も有効です。
- Man:人
- Machine:設備
- Material:材料
- Method:方法
ただし、4Mに項目を書き出すだけでは原因は確定しません。
それぞれの候補について、データや再現試験で確認する必要があります。
ステップ6.なぜなぜ分析で真因にたどり着く手順
なぜなぜ分析は、原因を深掘りする代表的な手法です。
しかし、形式的に「なぜ」を5回繰り返せば、真因へたどり着けるわけではありません。
たとえば、
なぜ寸法不良が出たのか
作業者が設定を間違えたから
なぜ間違えたのか
注意不足だったから
なぜ注意不足だったのか
教育が不足していたから
と進めると、対策は「再教育する」「注意喚起する」で終わります。
これでは、同じ状況が起きれば再発する可能性があります。
確認すべきなのは、
- 誰でも間違える入力方法になっていなかったか
- 正しい条件を自動で呼び出せなかったか
- 条件変更時に承認や照合がなかったか
- 間違った設定でも設備が動く仕組みだったか
- 異常を検知する方法がなかったか
という、仕組み側の原因です。
なぜなぜ分析では、次の点を確認します。
事実から始まっているか
推測を起点にすると、その後の「なぜ」も推測になります。
前後の因果関係がつながっているか
「なぜAが起きたのか」に対して、Bが本当にAを引き起こすのかを確認します。
原因を再現できるか
原因と考えた条件をつくったとき、同じ不具合が発生するかを確かめます。
原因を取り除けば発生しなくなるか
対策後に、同じ条件でも不具合が起きないことを確認します。
真因とは、もっともらしく説明できる原因ではありません。
その原因を取り除いたときに、不具合が再現しなくなると確認できる原因です。
ステップ7.暫定対策から恒久対策へ進める
不具合対応では、暫定対策と恒久対策を分ける必要があります。
暫定対策
被害を止め、供給を維持するための一時的な対応です。
- 全数選別
- 検査員の増員
- 検査頻度の引き上げ
- 一時的な条件変更
- 出荷前の追加確認
- 代替工程での生産
暫定対策は必要ですが、人手や負担に依存するものが多く、長期間続けることには向きません。
恒久対策
発生原因や流出原因を、仕組みとして取り除く対策です。
- 入力を自動化する
- 誤った部品が取り付かない構造に変える
- 金型や工具の交換基準を設定する
- 加工条件を設備側で管理する
- 検査方法や判定基準を変更する
- 異常時に設備が停止する仕組みにする
- 図面や作業標準を改訂する
- 変更管理の承認手順を見直す
「作業者に注意する」「再教育する」だけでは、恒久対策とは言い切れません。
人が間違えても不具合にならない、または次工程へ流れない仕組みへ変えることが重要です。
ステップ8.効果確認と水平展開を行う
対策を実施しただけでは、不具合対応は完了していません。
本当に効果があったかを確認します。
対策の効果をデータで確認する
- 対策後に同じ不具合が出ていないか
- 必要な期間や数量を確認したか
- 工程能力やばらつきは改善したか
- 新たな問題を発生させていないか
- 検査記録や設備記録で有効性を確認できるか
「対策を実施しました」という報告と、「対策が有効でした」という確認は別です。
類似工程や類似製品へ水平展開する
今回の不具合が、別の場所でも起きないかを確認します。
- 同じ設備
- 同じ金型や治具
- 同じ材料
- 同じ作業方法
- 同じ仕入先
- 類似製品
- 他工場や別ライン
一つの製品だけを直して終わると、少し条件を変えた場所で同じ問題が起きることがあります。
水平展開とは、対策書を関係部署へ配ることではありません。
同じ原因が存在する場所を探し、必要な対策を実施すること
です。
維持管理する責任者を決める
対策直後は守られていても、数か月後に元へ戻ることがあります。
- 誰が条件を監視するのか
- どの頻度で確認するのか
- 記録をどこへ残すのか
- 異常が出たとき誰へ報告するのか
- 標準書や検査表を誰が更新するのか
まで決めて、初めて再発防止が仕組みになります。
再発防止策の質を確認する4つの条件
提出された再発防止策が十分か迷ったときは、次の4点で確認できます。
1.発生条件が取り除かれているか
不具合を起こした条件が、工程や仕組みから除去されているか。
2.流出を防ぐ仕組みがあるか
同じ不具合や類似不具合が発生しても、顧客へ流出する前に検知できるか。
3.有効性を確認した記録があるか
対策後の生産結果や測定データなど、効果を確認できる根拠があるか。
4.水平展開と維持管理が決まっているか
類似工程へ展開され、責任者と確認方法が定められているか。
この4点のどれかが欠けていれば、対策はまだ途中です。
「再教育します」で終わらせてはいけない理由
不具合報告書でよく見かける対策に、
- 作業者へ再教育した
- 注意喚起を行った
- ミーティングで周知した
- ダブルチェックを徹底する
があります。
これらが不要というわけではありません。
しかし、それだけでは時間がたつと元に戻る可能性があります。
たとえば、作業者が部品を取り違えた場合、
作業者の確認不足
だけを原因にすると、対策は注意と教育になります。
しかし、さらに調べれば、
- よく似た部品が隣に置かれていた
- 品番表示が見えにくかった
- バーコード照合がなかった
- 誤った部品でも組み付けられた
- 作業標準に確認方法が書かれていなかった
という仕組み上の問題が見つかるかもしれません。
人の注意力だけに依存した対策は、忙しいときや担当者が変わったときに崩れます。
人が間違えることを前提に、間違えても不具合にならない仕組みをつくることが再発防止です。
発注側は不具合報告のどこを見るべきか
発注側や調達担当者は、報告書のページ数や見た目ではなく、次の点を確認します。
- 現象が測定値や写真で明確になっているか
- 対象範囲を十分に確認しているか
- 暫定処置によって流出を止めているか
- 発生原因と流出原因を分けているか
- 原因を裏づける事実や再現結果があるか
- 原因と対策がつながっているか
- 教育や注意だけで終わっていないか
- 対策後の効果を確認しているか
- 類似製品や工程へ水平展開しているか
- 維持管理の責任者が決まっているか
発注側が「原因を早く出してください」と急かしすぎると、サプライヤーは十分な検証をせず、もっともらしい原因を書いて提出することがあります。
早い報告は必要です。
しかし、初動報告の速さと、原因確定の速さは分けて考えなければなりません。
初動は速く。
原因は事実で確認する。
この使い分けが大切です。
調達は、品質・技術・サプライヤーをつなぐ
不具合が起きると、部門ごとに優先するものが異なります。
品質部門は、再発防止を優先します。
製造や技術部門は、工程の復旧を急ぎます。
営業部門は、顧客への影響を小さくしようとします。
調達部門は、サプライヤーとの調整や供給の回復を求められます。
どれも必要な視点です。
しかし、それぞれが自部門の正しさだけを主張すると、問題は前へ進みません。
調達が担うべきなのは、原因を決めることでも、品質部門の代わりになることでもありません。
- 顧客への影響
- サプライヤーの調査状況
- 代替供給
- 品質上の要求
- コストや納期への影響
- 社内の意思決定
をつなぎ、対策が完了するまで進行を管理することです。
不具合対応は、サプライヤーを責める場ではありません。
事実を共有し、再発しない状態を一緒につくる場です。
不具合の潰し方には、その会社の経営力が表れる
不具合ゼロを目指していても、発生の可能性を完全になくすことはできません。
だからこそ、会社の力は不具合が起きた後に表れます。
発覚後すぐに止められるか。
事実を隠さず報告できるか。
発生原因と流出原因を分けられるか。
曖昧な教育対策で済ませず、仕組みを変えられるか。
一つの問題を、類似工程の改善へつなげられるか。
こうした対応ができる会社は、不具合を単なる損失で終わらせません。
現場で得た知見を標準や仕組みに変え、次の品質へつなげます。
発注者の立場から見ても、不良を一度も出したことがないという説明だけでは、会社の対応力までは分かりません。
本当に信頼できるのは、
問題が起きたときに、どこまで正確に、速く、最後まで潰し切れるか
が見える会社です。
不具合を最後まで潰し切る力は、原価構造を見通す力と同じ根を持ちます。
品質と原価は別々の話ではなく、同じ「上流を見る目」の表れです。
→ 〔理論原価とは何か/『会社はもっと強くなる。』へ〕
まとめ――報告書ではなく、再発しない状態を残す
不具合対応は、原因報告書を提出して終わる仕事ではありません。
基本となる流れは、
発生
↓
封じ込め
↓
初動報告
↓
原因分析
↓
暫定対策
↓
恒久対策
↓
効果確認
↓
水平展開・完了
です。
特に重要なのは、
- 原因究明より先に被害を封じ込める
- 初動報告では事実と仮説を分ける
- 発生原因と流出原因を分けて調べる
- 暫定対策と恒久対策を混同しない
- 原因と対策をつなげる
- 効果確認と水平展開まで行う
- 維持管理の責任者を決める
ことです。
再発防止とは、二度と問題が起きないと宣言することではありません。
同じ原因で、同じ不具合を繰り返さない状態を、仕組みとして残すこと。
不具合の潰し方には、現場の技術力だけでなく、その会社の組織力と経営力が表れます。
RE:GENは、調達の立場から、サプライヤーとの不具合対応、原因・対策の整理、再発防止会議の進行、社内外の役割分担などを、現場で運用できる形へ整える支援を行っています。
「ちょっと話を聞いてみたい」でも大歓迎です。
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