工場訪問で調達が最初に見るもの──掲示物は“課題の鏡”から“改善のサイン”へ

コラム・調達豆知識

訪問時、調達のプロが最初に見るもの

新しい取引先や工場を訪問したとき、皆さんはどこに注目しますか?

私がまず見るのは、「掲示物」です。

工場や事務所の入り口、廊下、掲示板に掲げられた言葉やスローガンは、数字や仕様書では測れない「企業文化の健全さ」を読み解くサインです。

調達のプロにとって、これらは「現場の健康診断書」に等しい価値を持っています。

掲示物は「未解決の課題リスト」である

典型的に見かける掲示は次の通りです。

  • 安全第一
  • 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)
  • 挨拶をしよう

調達の立場から見ると、「できていること」をわざわざ掲示する会社は存在しません。

掲示されているのは、できていないからこそ注意喚起が必要なこと。

つまり、掲示物は「未解決の課題リスト」としても機能しているのです。

なぜ調達は課題リストに注目するのか

調達がこの「課題の鏡」を厳しく見つめるのは、感情論ではなく具体的なリスクに直結するからです。

  • 安全第一の形骸化 → 労災リスク・生産停止・サプライチェーン全体の遅延
  • 挨拶の不徹底 → コミュニケーション不足・図面の見落とし・品質体制の緩み

掲示物に手をつけられていない時点で、**「この程度の課題には真剣に取り組んでいない」**と受け取られ、長期的な信頼性を損なうリスクがあります。

印象に残った「ハラスメント撲滅」ポスター

ある会社を訪問した際、入門してすぐの場所に真新しい**「ハラスメント撲滅」**のポスターが大きく掲示されていました。

正直に言うと、私は少しゲンナリしました。

ここまで強調しなければならないのは、今まさに課題を抱えている証拠のように映ったからです。

そして一週間後に再訪すると、そのポスターはなくなっていました。

課題が解決したのか、あるいは**「外部から見えないようにしただけ」**なのかは分かりません。

ただ一つ言えるのは、訪問者に「ここが大きな課題だ」と強烈に伝わってしまったという事実です。

「課題の鏡」から「改善のサイン」へ

掲示物は課題の存在を示す一方で、改善に取り組んでいる意思表示でもあります。

だからこそ調達の視点で大事なのは、その掲示が形骸化しているか、真の改善につながっているかを見極めることです。

調達のプロが確認するポイント

  1. 時間軸の確認
     掲示物が古びていないか。汚れや色あせは「放置の証」。
  2. 現場との整合性
     掲げられたスローガンと現場の実態が一致しているか。
  3. 掲げなくても実践できているか
     挨拶や整理整頓が自然に文化として根付いているか。

健全な企業では、掲示物は単なる注意喚起ではなく、改善活動の進捗を示すツールになっています。

RE:GEN の視点:調達を経営の武器に

私たちRE:GENは、調達支援を行う中で、価格や品質の数値だけでなく、「現場のサイン」から企業文化とリスクを読み解く力を重視しています。

掲示物を通じて見えるのは、

  • 課題を放置する会社か、
  • 改善へとつなげる会社か。

調達の本質は「数字だけではなく、人と組織文化を見抜くこと」です。

そして、サプライヤーと共に**「掲げなくても実践できる文化」**を育むことが、サプライチェーン全体の強さにつながります。

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📌 まとめ一文

掲示物は会社の鏡。放置すればリスクを露呈し、改善に使えば信頼の証になる。

調達は、そのサインを見抜き「経営の武器」に変える視点が求められます。

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