一歩踏み込んだコミュニケーションが、調達を強くする
「接待って、やった方がいいのかな?」
経営者やバイヤーから、そんな声を耳にすることがあります。
確かに今は、コンプライアンス重視で「接待は不要」とする企業が増えました。形式的なお酒の席やゴルフで仕事が動くような時代ではありません。
でも同時に、「本当に良い関係を築くために、一歩踏み込んだコミュニケーションは不要なのか?」 という問いも浮かんできます。
接待の「負の遺産」
まず、接待がもたらす影響を整理してみましょう。
接待の有無で取引が左右されるような慣習は、公平な競争を妨げます。だからこそ、パナソニックをはじめ、多くの大企業は「接待禁止」を明確に打ち出し、リスクを回避しています。
形式的な接待を排除する姿勢は、企業にとって当然の流れです。
信頼関係が生む「本音」と「成果」
一方で、「接待禁止」と「本音の対話をやめること」は同じではありません。
トヨタの事例がそのことをよく物語っています。
トヨタは「接待を受ける側でも、世界一のメーカー」であり続けています。ではなぜか?
それは、接待そのものではなく、その奥にある『人間的な信頼関係』の価値を理解し、活かしているからです。
彼らは場を「ただの飲み会」ではなく、腹を割って話し合える場所として機能させています。だからこそ、サプライヤーも本音を語り、成果につながるヒントを惜しみなく出せるのです。
調達のあるべき「一歩踏み込んだコミュニケーション」
私たちが考える調達に必要なコミュニケーションの姿は、形式ではなく中身にあります。
- 人間性を知る
相手の趣味や価値観など、仕事以外の一面を知ることで、一人の人間として信頼を築けます。これは会議室の会話だけでは得られません。 - 共創の場をつくる
相手から情報をもらうだけでなく、自社の知見を提供し合う。「一緒に学ぶ関係」を意識することで、対等なパートナーシップが育ちます。 - 必ず成果につなげる
会話の中で出た小さなアイデアを、具体的なアクションにつなげる。「昨日の話を検討してみました」といった一言が、信頼を形にし、成果へ導きます。
これらは決して大げさなことではなく、今日から誰でも始められる一歩です。
まとめ:形式ではなく、本音で築くパートナーシップ
形式的な接待は不要です。
しかし、相手の人間性を理解し、本音で語り合える関係を築くことは、これからの調達においても欠かせません。
調達はコスト削減だけではなく、サプライヤーと「言ったことを、事にする」信頼を積み重ねることが、本当の競争力につながります。
調達の力を、中小企業の武器に。
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