決算書が読めると、調達は強くなる──「倒れない相手」を選び、利益の源泉まで見抜く

決算書と聞くと、「取引先が倒れないかを確かめる書類」と思われがちです。
もちろん、それも大事です。

でも、決算書からはもっといろいろ見えます。
その会社が、どこで儲けているのか。何が得意で、どこが苦しいのか。
次に何をしようとしているのか。 
それが読めると、値段の交渉も、どの取引先と深く付き合うかの判断も、社長への説明も、ぐっと変わります。

むずかしい話はしません。
数字を細かく理解する必要もありません。
見るのは「増えているか、減っているか」と「同じ業界の会社と比べてどうか」。
それだけで十分です。

1. 決算書は「会社の体調表」

会社を人にたとえると、決算書は健康診断の結果です。見るのは2枚だけ。

  • B/S(貸借対照表)=いまの体格
    自分のお金(返さなくていいお金)と、借りたお金。
    そのお金を、設備や在庫や現金に、どう振り分けているか。
  • P/L(損益計算書)=1年の動き
    いくら売って、どこにいくら使って、いくら残ったか。

細かい科目は覚えなくていい。「去年よりどっちに動いたか」を見ます。

2. 倒れない取引先かどうかは、3つだけ見ればいい

取引先の決算書を見る目的は、「儲かっている会社を探すこと」ではありません。
その会社との供給が、これからも止まらないか。
 工場は動き続けるか、品質は保てるか、設備は更新できるか。
それを先回りで確かめるためです。

見るのは、この3つで足ります。

① 粗利(あらり)が薄くないか = 現場の「余裕」 
売った金額から、材料費と加工費を引いて残るのが粗利です。
ここが薄い会社の現場には、余裕のなさがにじみます。
整理整頓が雑になる、図面の管理が乱れる、検査結果にムラが出る。
腕が落ちたのではなく、余白がなくなっているサインです。

② 自分のお金で立てているか = 「挑戦」できる力 
むずかしく言うと「自己資本比率」。
ふつうに言えば、会社のお金のうち、借金じゃない部分がどれくらいあるかです。
借金頼みで自分のお金が薄い会社は、現場が「攻め」でなく「耐える」空気になります。
新しい設備や人の育成にお金を回せない。
挑戦できる会社は、これからの取引を一緒に育てられる会社です。
※どれくらいあれば安心かは業界でぜんぜん違います
(設備の重い業界は高め、組立中心は低め)。
「この数字は危ないのか、業界的にふつうなのか」は、同業と並べて見ます。

③ 現金があるか = 「呼吸」
 手元の現金が薄い会社は、小さなトラブルで止まります。
不具合対応に追われて他が回らない、ちょっとした納期遅れが長引く。
逆に現金のある会社は、何かあっても立て直しが速く、判断がぶれません。
誠実さや対応の速さは、じつは現金に支えられています。

数字は、必ず現場に出ます。
設備の音が変わる、置き場が乱れる、社内の会話から余裕が消える。
決算書は遠くの景色、現場は手元の空気。

両方を見るのがバイヤーの仕事です。

3. その会社は「どうやって食べているか」を知る

ここからが、倒産チェックの一歩先です。
決算書は、その会社の商売のやり方を映します。

設備でつくる会社か、人の手でつくる会社か 

メッキ、鋳造、型モノの成形のように、高い設備を並べてつくる会社は、忙しいときは強い。
でも仕事が減ると、その設備の維持費が重石になります。
一方、組立やハーネスのように人の手が中心の会社は、身軽なぶん、人が余ることと在庫を抱えることを何より嫌がります。
 同じ「値下げして」でも、刺さる言い方が違います。
 設備型には「稼働を埋める話(まとまった発注・長い付き合い)」、
人手型には「早く現金になる話(発注をまとめる・支払いを早める)」。
相手のつくり方に合わせると、話が前に進みます。

どこで儲けているのか 

設計で儲ける会社、つくって儲ける会社、売って儲ける会社。
P/Lを見ると、その会社の「稼ぎどころ」が見えます。
相手の稼ぎどころを踏まないことが、長く付き合う条件です。 
設計で食べている相手に「図面もそっちで無料でお願い」と言えば、関係は続きません。

大きな動きは決算書に出る 

取引先の設備や資産が急に増えていたら、「大きな投資をしたな」「会社を買ったな」と読めます。
その投資がちゃんと利益になっているかは、翌年のP/Lで確認する。

大事な取引を動かす前に、相手の決算書を2〜3年ぶんさかのぼって見ておく。
 それだけで、慌てずに済みます。

4. 社長に話すときは、「値段」じゃなく「お金の回り方」で

たとえば「海外の取引先を国内に切り替えたい。単価は上がる」という相談。
単価だけで言うと「コストアップ」で終わります。

でも、「在庫を減らせる」「同じ運転資金でもっと回せる」「支払いと入金のズレが縮む」 まで足して話すと、「単価は上がるけど、お金の回り方は良くなる」という判断に変わることがあります。

調達は、値段を叩く係ではありません。
自社と取引先の両方が食べていける形をつくる係です(調達を経営の武器にする理由)。
その設計図が、決算書です。

5. RE:GENの見方──決算書は「責める道具」ではない

RE:GENが取引先の決算書を見るのは、値段を下げさせるためではありません。
どこに強みがあって、どこが弱くて、どこを直せば一緒に儲かるかを見つけるためです。

「粗利が薄いのは、腕が悪いからじゃありません。値段の付け方が何年も前のまま止まっているだけです」——そう言えたとき、価格交渉は「削り合い」から「どこを一緒に伸ばすか」の相談に変わります。

RE:GENという名前は、「利は元にあり」という一語から取りました。
利益は、安く買い叩いて生まれるのではなく、売る前の、仕入れと関係づくりのところで決まっている
決算書は、その「元(もと)」を読むための道具です。

数字が読めるバイヤーは、「締め付ける相手」ではなく「一緒に育てる相手」になれます。

まとめ

  • 決算書は「倒産チェック」だけの道具じゃない。取引先の商売のやり方が見える
  • 倒れないかは 粗利・自分のお金の割合・現金 の3つで足りる。同業と比べて見る
  • 「設備でつくる会社/人の手でつくる会社」「どこで儲けているか」で、刺さる交渉の言い方が変わる
  • 大きな投資やM&Aは決算書に出る。大事な取引の前に、2〜3年さかのぼって見る
  • 社長に話すときは、単価ではなく お金の回り方(在庫・運転資金・入出金のズレ) で
  • 決算書は、責める言葉ではなく、一緒に先を見る言葉

「決算書、どう見ればいいか分からない」——その段階からで大丈夫です。
自社の取引先の数字を、一緒に見るところから始めましょう。 → 無料相談

よくある質問

Q. 決算書のどこを見ればいいですか?

A. まずは粗利・自分のお金の割合(自己資本比率)・現金の3つ。金額の大小より「去年より増えたか減ったか」と「同業と比べてどうか」を見ます。

Q. 数字が苦手でも大丈夫ですか?

A. 大丈夫です。細かく理解する必要はありません。目的は「この取引先と、これからも安全に付き合えるか」を確かめること。3つの数字の向きが分かれば十分です。

Q. 「自分のお金の割合」はどれくらいあれば安心ですか?

A. 業界でぜんぜん違います。設備の重い業界は高め、組立中心は低め。「危ないのか、業界的にふつうなのか」は同業と並べて判断します。

Q. 決算書は値段の交渉に使えますか?

A. 使えます。相手が「設備でつくる会社」か「人の手でつくる会社」かで、欲しいもの(稼働を埋めたい/早く現金にしたい)が違います。そこに合わせると話が前に進みます。

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