バイヤーは財務諸表のここだけ見る──“倒れない相手”を選ぶための実務視点

コラム・調達豆知識

📈 バイヤーが見るべき財務は「3つの数字」だけ:安全な取引を継続するための極意

調達の仕事において、取引先の「財務状態」を見極める力は欠かせません。

しかし財務諸表と聞くと、こう感じる方は多いはずです。

「文系だから難しいのでは?」
「数字が苦手で…」

結論として、バイヤーが財務諸表を見る目的は、
“数字を深く理解するため”ではありません。

目的はただ一つ。

「この会社は、これからも安全に取引を続けられるか?」を判断すること。

この「経営視点の調達」については、以下の記事でも解説しています。
調達が経営の武器になる理由

その判断に必要な数字は、実は 3つだけ です。


1. バイヤーが財務を見る目的は「儲け」ではなく「継続性」

取引先の財務を確認する理由は、「儲かっている会社を探すため」ではありません。
バイヤーが知りたいのは、自社のサプライチェーンが滞りなく維持されるか、という安全保障です。

  • 工場は止まらないか
  • 品質は維持できるか
  • 設備更新は継続できるか
  • 納期遅延や倒産のリスクはないか

つまり財務は、
未来のトラブルを予防するためのチェック です。

財務諸表は、言い換えると 企業の健康診断書 です。


2. バイヤーが見るべき“3つの数字”

見る項目意味例えるなら
売上総利益(粗利)本当に稼げているか走る体力。ここが少ないとすぐ息切れする
自己資本比率倒れにくさ(体力・土台)どれだけ自分の足で立てるか
現金・預金今どれだけ持ちこたえられるか呼吸回数。息が切れたら終わり

数字の意味を深く読み解く必要はありません。
変化の方向(増えているか/減っているか) に注目すれば十分です。

視点の追加:業界平均との比較

粗利や自己資本比率の「適正値」は、装置産業とサービス業など、業界によって大きく異なります。

  • 「御社の数字が、同業他社と比べてどの位置にあるか」

という視点で見ることで、その数字が本当に危険なのか、業界特性によるものなのかを判断できます。


3. “危険サイン” はこうして現れる

財務は数字ですが、影響が出るのは現場です。数字の変化と現場の変化は必ず連動します。

財務の変化現場に現れる兆候バイヤー側のリスク
粗利が低い / 下がり続けている作業精度の低下・教育コスト削減品質不良・やり直し・納期遅延
自己資本比率が低い(20%以下)借入に依存・現場が張り詰める突発停止・急な取引停止
設備投資が止まっている技術力が停滞・若手が育たない中期的な競争力喪失

この「品質と利益構造の関係」については、こちらの記事で詳しく触れています。
価格交渉だけでは利益は生まれない


4. 財務と現場は必ずつながっている

数字の変化は、必ず現場の変化として現れます。

  • 5Sが雑になる
  • 図面管理が乱れる
  • 検査結果がムラになる
  • 設備の音が変わる(これは本当に現場のサインです)
  • 社内の会話が「余裕がない雰囲気」になる

つまり、こうです。

財務は遠くの景色。 現場は手元の空気感。 両方を同時に読むのがバイヤー。


5. サプライヤーから見ても“財務が読めるバイヤー”は信頼できる

財務を読めるバイヤーは、値引き要求だけをしません。
彼らは取引先の「健康診断書」を理解しているからです。

  • 「なぜこの価格なのか」を理解できる
  • 設備投資が必要な場面を理解できる
  • 中長期の利益を一緒に考えられる

これは “共存共栄型の調達” の考え方です。
なぜ調達出身の経営者は少ないのか

つまり、財務が読めるバイヤーは
「締め付ける相手」ではなく「共に育てる相手」になります。

サプライヤーにとっても、安心して付き合い続けられるのです。


6. RE:GENの視点──財務は“交渉材料”ではなく“共創材料”

RE:GENが財務を見る目的は、価格を下げるためではありません。

  • どこに力を入れるべきか
  • どこが価値の源泉か
  • どこに弱さがあり、改善できるか

一緒に見つけるため に使います。

それはまさに、

利は元にあり
利益は、共に価値を生み育てる関係の中にある。

という考えそのものです。


まとめ

  • バイヤーは財務を「未来の安全」のために読む
  • 見るのは 粗利 / 自己資本比率 / 現金 の3つで十分
  • 財務と現場は必ずつながっている
  • 財務が読めるバイヤーは「長く強い関係」を作れる

財務は数字の話ではなく、関係性と未来の話である。

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