在庫は「持つな」ではなく「設計せよ」──攻めの調達で会社は変わる

ものづくりを支える調達

「在庫は罪庫だ」「在庫はキャッシュを殺す」
──こんなフレーズを耳にしたことはありませんか?

確かに、動かない在庫が会社の資金を縛り、倉庫を圧迫し、利益をむしばむのは事実です。

けれど、私はあえて言いたいのです。

「在庫は持つな」ではなく「在庫は設計せよ」 と。

調達の現場では、単に“減らす”ことが正解ではありません。

むしろ、どの在庫をどれだけ持つかを「設計」できるかどうかで、
会社の未来は大きく変わります。

1. 在庫はキャッシュを動かす“資金設計”の一部

在庫を設計すると、まず 資金の流れが変わります。

例えば、3か月分を積み上げていた部材を1.5か月分にしただけで、
手元資金が500万円浮いたケースがありました。

その資金は、新しい営業人材の採用や、新設備投資に振り向けることができます。

在庫は“お金を眠らせるもの”ではなく、資金の配置をデザインする道具です。

2. 倉庫スペースも利益に変わる

余剰在庫を減らすと、単に物が減るだけではありません。

ある企業では倉庫の面積を20%削減でき、年間120万円の倉庫賃料を節約しました。

倉庫スペースは見えない固定費。

在庫設計は「モノづくりの不動産投資」を最適化する行為でもあるのです。

3. “廃棄リスク”を設計で潰す

ロットでしか買えないからと仕方なく余剰を抱え、そのまま死蔵──よくある話です。

けれど、それを「当たり前」とせずに、共同購買やサプライヤーとの協働在庫を設計すれば、廃棄はゼロに近づけられます。

実際に、廃棄が減るだけでなく、サプライヤーとの協力体制が強まり、交渉の土台も安定したという声を聞きます。

4. 交渉力を高める“設計された在庫”

在庫を「持たされる」のではなく、「こう設計して持つ」と示せる会社は、
サプライヤーから一目置かれます。

「このバイヤーは数字で考え、先を見据えている」と認識されるからです。

在庫を設計できること自体が、調達力の可視化=信頼の獲得につながります。

5. 在庫は“攻めの武器”にもなる

在庫は守りのためだけではありません。

余剰在庫を販促用の試作品に転用したり、小ロットで困っている顧客への
サービスにつなげた事例もあります。

動かない在庫を「試す」「見せる」に変えることで、新しい顧客接点を生む武器にできます。

まとめ──在庫は罪庫か、武器か

在庫は“減らす”か“抱える”かという単純な話ではありません。

設計次第で「資金を動かす」「スペースを空ける」「廃棄を減らす」「信頼を築く」「新しい商売を生む」──そんな多面的な効果をもたらします。

在庫は罪庫にもなりますが、調達の設計次第で、未来をひらく武器に変わるのです。

RE:GENでは、大手メーカーの調達部門で培ったノウハウをもとに、中小企業が実践できる「在庫の設計力」を一緒に磨いています。

「在庫は持つな」ではなく「在庫を設計せよ」──この視点が、会社の利益体質を変える第一歩になります。

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