イタコナとは何か──「板」と「粉」までさかのぼる、原価の考え方

イタコナとは何か──「板」と「粉」までさかのぼる、原価の考え方

バイヤーとの打ち合わせで、ふいに「イタコナ」という言葉を聞いた。

聞き慣れない響きに、調べてここへたどり着いた方もいるかもしれません。

イタコナとは、大手電機メーカーの調達・原価改善の現場で使われてきた原価分析の考え方です。

部材を「イタ(板)」と「コナ(粉)」──板金やプリント基板、樹脂といった素材のレベルまで分解し、そこから原価を積み上げていく。
「なぜこの価格なのか」を、素材までさかのぼって理論的に突き止める手法を指します。

本記事では、この考え方をひも解きながら、中小製造業が自社に取り入れられるヒントを整理します。

「板」と「粉」まで分解する、という発想

イタコナの要点は、完成した部品の価格を「高い」「安い」と評価することではありません。

その部品が、どの素材から、どのような工程を経て、いくらで成り立っているのか。
板金なら鉄板の重量と単価から、樹脂ならペレットのグラム数から、原価を組み立て直す。
素材まで分解すれば、価格の内訳が見えてきます。

見積書に書かれた一つの金額を受け取るのではなく、
その金額がどう構成されているかを、自分の側で再現できるようにする。

これは、単に安く買うための技術ではありません。
価格の根拠を、買い手が自分の言葉で語れるようにする営みです。

「安くしてほしい」から、「なぜこの価格なのか」へ

価格交渉というと、値下げを迫る場面を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかしイタコナの発想は、そこにありません。

素材まで分解して原価を理解したうえで、実際の製造や物流にかかったコストを把握し、
そこにサプライヤーの適正な利益を乗せる。
その価格で調達する。分解の過程で見えてきた不良やロスは、サプライヤーと一緒に知恵を絞って小さくしていく。

一方的に利益を削らせるのではなく、コストの構造を共通の言葉にして、
同じ図面を見ながら改善の糸口を探す。
強い調達力の裏側には、この地道なやり取りがあります。

中小製造業が、明日から取り入れられること

「専門部隊を持つ大企業だからできる話だろう」

そう感じる方もいるはずです。確かに、同じ体制をそのまま再現するのは難しい。
ですが、発想の芯はむしろ単純で、規模を問わず取り入れられます。

価格交渉の前に、内訳を尋ねてみる。
この見積は、材料費がいくらで、加工費がいくらなのか。
すぐに答えが返ってこなくても、問いを立てること自体が、価格をブラックボックスから引き出す第一歩になります。

主要な部品を一つ選び、素材の重量と単価から、おおよその原価を自分で組み立ててみる。
見積との差が、そのまま次の対話の入口になります。

こうした一歩が積み重なると、調達は「安く買う仕事」を超えて、
利益を設計する仕事に変わっていきます。

「板」と「粉」の先にあるもの

素材まで分解し、材料費、加工費、工程、歩留まりを一つずつ積み上げていく。

すると、

この製品は、本来いくらでつくれるのか

が見えてきます。

このように、価格の根拠を積み上げて求めるのが理論原価です。

しかし、理論原価が分かっただけでは、会社に必要な利益が残るとは限りません。

積み上げて算出した原価が8,000円でも、販売価格と必要な利益から考えれば、原価を7,000円に収めなければならないことがあります。

販売価格から必要な利益を先に差し引き、

原価はいくらでなければならないのか

を定めるのが、目標原価です。

理論原価は、現実から積み上げる。

目標原価は、残すべき利益から逆算する。

この二つの数字には、しばしば差が生まれます。

その差を、サプライヤーへの値下げ要求だけで埋めるのではありません。

材料を変えられないか。

工程を減らせないか。

発注ロットを見直せないか。

必要以上に厳しい仕様や検査はないか。

サプライヤーと同じ図面を見ながら、二つの原価が整合する場所を探していく。

そこに、RE:GENが考える原価改善があります。

ただし、そこから先は、また別の話です。

いずれにせよ、利は、売った後に偶然残るものではありません。

「板」と「粉」まで戻り、原価の構造を知るところから始まっています。

バイヤーが口にした「イタコナ」という一言は、その入口だったのかもしれません。

この「利は、売る前に決まっている」という見方そのものを、「利は元にあり」とは何かのコラムで解説しています。


RE:GENは、30年以上の調達経験をもとに、中小製造業の原価の見直し、
仕入先開拓、在庫・商流の改善などを支援しています。
「価格の内訳に、根拠を持って踏み込みたい」——そう感じたら、まずは現在の調達状況を整理するところから、一緒に考えます。

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