文系でも読める!図面の超入門【応用編②表面処理を読み解く】

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バイヤー必見:図面から“表面処理”を読み解く力をつけよう


図面の「小さな一言」が価格を変える?

図面をじっくり見ていると、部品形状や寸法のほかに小さく書かれた「処理指示」が目に入ることがあります。
「アルマイト処理」「タフトライド」「黒染め」「クロムメッキ」…。

文系出身のバイヤーにとっては、これらの言葉は「なんだか難しそう」「コストが高そう」という印象しか持てないかもしれません。
しかし実は、この表面処理の理解が価格と納期の分かれ道になります。

本記事では、前回の【基礎編】に続き、調達担当者が知っておくべき“表面処理の基本と読み解き方”を丁寧に解説します。

この記事は「図面超入門【応用編】」シリーズのひとつです。
まずは基本から整理したい方は、こちらの記事をご覧ください。

👉 文系でも読める!図面の超入門【基礎編】


なぜ表面処理が必要なのか?

そもそも表面処理は「余分な装飾」ではなく、部品が製品としての役割を果たすために必要な最終工程です。
代表的な目的は次の3つに整理できます。

  • 防錆(さび止め):鉄やアルミはそのままでは腐食するため、メッキや塗装で守る。
  • 耐摩耗性の付与:ギアやシャフトなど摩擦する部品は、硬度を上げる処理(焼入れ・タフトライドなど)が必須。
  • 外観・デザイン性:製品としての見た目の良さや、ロゴ・色の指定に対応する。

つまり、表面処理は「不要な飾り」ではなく、機能性を確保するための仕上げなのです。


代表的な表面処理の分類

バイヤーが最低限押さえるべき代表的な処理を分類してみましょう。

(1) メッキ系

  • 亜鉛メッキ:鉄部品の防錆に多用。自動車のボルトや鋼材で頻出。
  • ニッケルメッキ/クロムメッキ:外観や耐食性を高めたいときに採用。家電や工具などでよく見る。

(2) アルマイト(アルミの酸化皮膜処理)

  • アルミ部品の表面を酸化させて硬くし、耐食性・耐摩耗性を高める。
  • 黒色アルマイトやカラーアルマイトは外観部品で指定されやすい。

(3) 熱処理

  • 焼入れ・焼戻し:鋼材を加熱・冷却して硬度を調整。
  • タフトライド処理:窒化処理の一種で、シャフトやギアに高い耐摩耗性を付与。

(4) 塗装

  • 粉体塗装:環境対応で増加。厚みがあり耐久性が高い。
  • 電着塗装:自動車のボディなど、大量生産で均一性が求められる製品に。

(5) 特殊・機能性コーティング

  • フッ素樹脂コート(テフロン):摩擦を減らす/非粘着。調理器具やスライド機構に多用。
  • セラミックコート:高温耐性や絶縁性を付与。

硬度・耐摩耗性の指標を理解する

図面には「HRC60」や「HV500」といった硬度指示が書かれることがあります。
これは加工後の表面の硬さを規定しているものです。

  • ロックウェル硬度(HRC):鉄鋼の焼入れ後によく使う。
  • ビッカース硬度(HV):セラミックや薄い皮膜に適用。

数値が高いほど硬く、摩耗に強い一方で「脆くなる」場合もあり、用途に応じてバランスが求められます。


商品名と一般名称に注意!

調達の現場では「商品名=一般名称化」しているケースが多々あります。

  • テフロン → 正しくは「フッ素樹脂コーティング」
  • ジュラルミン → 高強度アルミ合金の一種
  • スーパーダイマ → 亜鉛メッキ鋼板の商品名

図面にこうした名称がそのまま書かれていると、「他社では対応できない」「特定メーカー依存」になる危険性があります。
バイヤーとしては、一般名称に置き換えて考える癖を持つことが大切です。


バイヤーが押さえるべき見極めポイント

表面処理は価格や納期に大きく影響するため、調達段階での確認が必須です。

  1. この処理は本当に必要か?
     過剰仕様になっていないかを設計者と確認。
  2. コスト増要因の理解
     - 外注依存 → サプライヤーが限られる
     - ロット制約 → 小ロットだと割高に
     - 治具費用 → 新規処理には追加費用がかかる
  3. サプライヤー選定の観点
     - メッキや塗装などは「外注専門業者」に依存することが多い
     - 信頼できる処理業者をどれだけ確保できるかが調達力の差

まとめ:表面処理は“機能を足す”工程

アルマイト、タフトライド、メッキ…どれも単なる見た目の違いではなく、

耐食性・硬度・摺動性・コストなど、製品の性能や寿命を左右する大事な加工です。
図面を読むときに「ここはなぜこの表面処理なのか?」を考えるだけで、調達の目線が一段深まります。

  • 防錆か?耐摩耗か?外観か?
  • 本当に必要か?過剰仕様ではないか?
  • 誰に依頼すれば最適か?

この3つを意識すれば、文系バイヤーでも図面の「処理指示」を武器に変えることができます。

バイヤーは専門家になる必要はありませんが、「機能を足す工程なんだ」と理解し、サプライヤーやエンジニアと会話できる視点を持つことが重要です。そうすれば、コストや納期の交渉もぐっと現実的で前向きなものになります。

RE:GENは、こうした知識をわかりやすく整理し、サプライヤーとの建設的な対話につなげるお手伝いをしています。

さらに理解を深めたい方へ

この記事は「図面超入門【応用編】」シリーズのひとつです。
まずは基本から整理したい方は、こちらの記事をご覧ください。

👉 文系でも読める!図面の超入門【基礎編】

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