バイヤー必見:図面から“表面処理”を読み解く力をつけよう
図面の「小さな一言」が価格を変える?
図面をじっくり見ていると、部品形状や寸法のほかに小さく書かれた「処理指示」が目に入ることがあります。
「アルマイト処理」「タフトライド」「黒染め」「クロムメッキ」…。
文系出身のバイヤーにとっては、これらの言葉は「なんだか難しそう」「コストが高そう」という印象しか持てないかもしれません。
しかし実は、この表面処理の理解が価格と納期の分かれ道になります。
本記事では、前回の【基礎編】に続き、調達担当者が知っておくべき“表面処理の基本と読み解き方”を丁寧に解説します。
この記事は「図面超入門【応用編】」シリーズのひとつです。
まずは基本から整理したい方は、こちらの記事をご覧ください。
なぜ表面処理が必要なのか?
そもそも表面処理は「余分な装飾」ではなく、部品が製品としての役割を果たすために必要な最終工程です。
代表的な目的は次の3つに整理できます。
- 防錆(さび止め):鉄やアルミはそのままでは腐食するため、メッキや塗装で守る。
- 耐摩耗性の付与:ギアやシャフトなど摩擦する部品は、硬度を上げる処理(焼入れ・タフトライドなど)が必須。
- 外観・デザイン性:製品としての見た目の良さや、ロゴ・色の指定に対応する。
つまり、表面処理は「不要な飾り」ではなく、機能性を確保するための仕上げなのです。
代表的な表面処理の分類
バイヤーが最低限押さえるべき代表的な処理を分類してみましょう。
(1) メッキ系
- 亜鉛メッキ:鉄部品の防錆に多用。自動車のボルトや鋼材で頻出。
- ニッケルメッキ/クロムメッキ:外観や耐食性を高めたいときに採用。家電や工具などでよく見る。
(2) アルマイト(アルミの酸化皮膜処理)
- アルミ部品の表面を酸化させて硬くし、耐食性・耐摩耗性を高める。
- 黒色アルマイトやカラーアルマイトは外観部品で指定されやすい。
(3) 熱処理
- 焼入れ・焼戻し:鋼材を加熱・冷却して硬度を調整。
- タフトライド処理:窒化処理の一種で、シャフトやギアに高い耐摩耗性を付与。
(4) 塗装
- 粉体塗装:環境対応で増加。厚みがあり耐久性が高い。
- 電着塗装:自動車のボディなど、大量生産で均一性が求められる製品に。
(5) 特殊・機能性コーティング
- フッ素樹脂コート(テフロン):摩擦を減らす/非粘着。調理器具やスライド機構に多用。
- セラミックコート:高温耐性や絶縁性を付与。
硬度・耐摩耗性の指標を理解する
図面には「HRC60」や「HV500」といった硬度指示が書かれることがあります。
これは加工後の表面の硬さを規定しているものです。
- ロックウェル硬度(HRC):鉄鋼の焼入れ後によく使う。
- ビッカース硬度(HV):セラミックや薄い皮膜に適用。
数値が高いほど硬く、摩耗に強い一方で「脆くなる」場合もあり、用途に応じてバランスが求められます。
商品名と一般名称に注意!
調達の現場では「商品名=一般名称化」しているケースが多々あります。
- テフロン → 正しくは「フッ素樹脂コーティング」
- ジュラルミン → 高強度アルミ合金の一種
- スーパーダイマ → 亜鉛メッキ鋼板の商品名
図面にこうした名称がそのまま書かれていると、「他社では対応できない」「特定メーカー依存」になる危険性があります。
バイヤーとしては、一般名称に置き換えて考える癖を持つことが大切です。
バイヤーが押さえるべき見極めポイント
表面処理は価格や納期に大きく影響するため、調達段階での確認が必須です。
- この処理は本当に必要か?
過剰仕様になっていないかを設計者と確認。 - コスト増要因の理解
- 外注依存 → サプライヤーが限られる
- ロット制約 → 小ロットだと割高に
- 治具費用 → 新規処理には追加費用がかかる - サプライヤー選定の観点
- メッキや塗装などは「外注専門業者」に依存することが多い
- 信頼できる処理業者をどれだけ確保できるかが調達力の差
まとめ:表面処理は“機能を足す”工程
アルマイト、タフトライド、メッキ…どれも単なる見た目の違いではなく、
耐食性・硬度・摺動性・コストなど、製品の性能や寿命を左右する大事な加工です。
図面を読むときに「ここはなぜこの表面処理なのか?」を考えるだけで、調達の目線が一段深まります。
- 防錆か?耐摩耗か?外観か?
- 本当に必要か?過剰仕様ではないか?
- 誰に依頼すれば最適か?
この3つを意識すれば、文系バイヤーでも図面の「処理指示」を武器に変えることができます。
バイヤーは専門家になる必要はありませんが、「機能を足す工程なんだ」と理解し、サプライヤーやエンジニアと会話できる視点を持つことが重要です。そうすれば、コストや納期の交渉もぐっと現実的で前向きなものになります。
RE:GENは、こうした知識をわかりやすく整理し、サプライヤーとの建設的な対話につなげるお手伝いをしています。
さらに理解を深めたい方へ
この記事は「図面超入門【応用編】」シリーズのひとつです。
まずは基本から整理したい方は、こちらの記事をご覧ください。
コメント