正論は正しいのか──現場が教えてくれた「正しさ」の限界

コラム・調達豆知識

正論は、えてしてヒエラルキーに負ける

正論は、いつだって正しい。

しかし、組織の中では「誰が言うか」で正しさが変わるという残酷な現実がある。

調達の現場も例外ではない。

「理論原価でいけばこの価格が妥当です」と資料を示しても、相手の面子や感情が納得しなければ、それはただの数字遊びで終わる。

会議室で上司が言えば「その通りだ」と通る。

現場の担当者が言えば「生意気だ」と受け取られる。

つまり、正論はヒエラルキーの中で変質するのだ。

「正しいことを言う人」より、「偉い人が言ったこと」が正しい。

それが現実であり、その構造を知らずに正論だけで戦う人ほど、不器用で損をする。組織を動かすのは、正論の鋭さではなく、関係性の力なのだ。

正論を振りかざす人は、実は“弱い”

正論を武器にして戦う人の多くは、「本当の正論」を知らない。

本当の正論とは、相手を動かせる正論のことだ。
相手が動かないなら、それはただの自己満足にすぎない。

調達会議で数字や理屈を並べ立てる人がいる。

「こうすれば原価はもっと下がる」「サプライヤーが高すぎる」。

確かに理屈は正しい。

だが、現場を知らない言葉ほど、現場の心を冷やすものはない。

声を張り上げる正論は、だいたい誰かを見下している。

それは正義感ではなく、承認欲求だ。
「自分が正しい」と証明したい人ほど、実は自分を信じられていないという矛盾がそこにある。

サプライヤーに正論で挑むバイヤーが知るべきこと

ある大手メーカーの調達部門で、若手バイヤーがサプライヤーにこう詰め寄った。

「この工法なら、理論原価的にあと5%は下げられるはずです」。

理屈は間違っていなかった。

しかし、サプライヤーは静かにこう答えた。

「あなたの言う“理論”の中に、現場の人の手の動きはありますか?」

その瞬間、会議室の空気が変わった。

机上の正論と、現場の現実の間にある深い溝。
数字の裏にある“人の動き”や“長年のノウハウ”を見なければ、交渉は成立しない。

正論をぶつけて相手をねじ伏せるのは簡単だが、それで信頼は残らない。
正論を伝えるなら、相手が「協力したい」と飲み込める形にすること。
それが、コスト改善という現実を動かす「通る正論」だ。

部門間の「正論」がぶつかる現場と解決のヒント

営業は「顧客が最優先だ」と言い、

調達は「利益を守るのが最優先だ」と言う。

工場は「安全と品質が最優先だ」と主張する。

どれも正しい。だが、その“正しさ”をぶつけ合っても、会社は一歩も動かない。

あるとき、納期遅延で営業が工場に詰め寄った際、工場長が小さく言った言葉が忘れられない。

「守れない納期を守らせるのが、営業の仕事だと思ってたけどな」

そこには皮肉と同時に、静かな誇りがあった。どちらも嘘は言っていない。

だからこそ、正論では解けない。
必要なのは、互いの「正しさ」を一旦受け止め、共有のゴールへと繋ぐ、
調達のような調整役の存在なのだ。

正論より、呑み込む力──それが組織を強くする

もうひとつの問題は、正論の鋭さに怯え、他人の正論に自分を委ねる人たちだ。「上が言うからそうしよう」「仕方ないですよね」と思考を停止する。これは「波風を立てない」という名の怠慢だ。

世の中を動かすのは、正しい人ではなく、呑み込める人だ。

理不尽や、相手の「正論」を一度飲み込み、相手の立場を理解し、それでも前に進める人が、組織を支えている。

呑み込むとは、諦めることではない。

それは、「相手の立場を理解した上で、最も現実を動かすための一歩を選ぶ」という、
究極の戦略的行為である。

この「呑み込む力」こそが、サプライヤーから隠れたノウハウを引き出す鍵となり、
社内の部門間の協力を生み出し、結果として調達活動の成功に繋がるのだ。
静かに呑み込む人は、本当は最も強い。

🪶 おまけ──正論を言う人への処方箋

正論を言う人を変えようとしても、まず無理です。

そういう人は「わかってもらう」ことより、「わかってもらったと感じたい」人だからです。

だから、対処法はひとつ。

「うん、わかったよ」

これでいい。

彼らは“勝つ”より“認められたい”のです。

正論の裏にある寂しさまで呑み込める人が、結局いちばん強い。

RE:GENの視点──「届く正論」を作る、調達の羅針盤

調達の現場もまた、正論だけでは動かない。

理論原価や合理化の理屈が通っても、現実は人が動いてこそ変わる。

RE:GENがコンサルティングで提供するのは、単なる「理論原価」という正論ではない。

• 正論の構築: 現場の現実と数字を繋ぎ、反論できない論理を構築する力。

呑み込む力の活用: その正論を、相手の面子や立場を尊重し、「協力したい」と思える形にパッケージ化する知恵。

私たちは、この「正論の鋭さ」と「呑み込む知恵」のバランスこそが、現代の調達担当者に最も必要なスキルだと考えています。

「うん、わかったよ」と相手の正論を一旦受け止め、その上で「では、共にどう動くか」を提案できる。理屈だけではない、相手の立場と誠実さで磨かれた言葉だけが、人を動かし、企業を前に進める力になる。それがRE:GENの考える“届く正論”であり、調達の羅針盤です。

まとめ──正論を「行動」に変えるための羅針盤

正論とは、相手を動かす力のある言葉。

それ以外は、ただの自己満足だ。

正しさより、呑み込む力。

その戦略的なバランスこそが、組織を本当に強くし、調達を成功に導く鍵となる。

しかし、このバランスを自社だけで見極め、実行に移すのは容易ではありません。

「誰の正論を採用すべきか」「どのタイミングで呑み込むべきか」
――この判断軸こそ、長年の経験と多くの失敗から学んだ、RE:GENの核となるノウハウです。

調達やサプライヤーマネジメントにおいて、現場の摩擦を解消し、
「届く正論」を構築するための具体的な戦略をお探しの経営者様、
調達責任者様は、ぜひ一度RE:GENにご相談ください。

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📌 ひとこと

正論とは、相手を動かす力のある言葉。
それ以外は、ただの自己満足だ。
正しさより、呑み込む力。
それが、組織を本当に強くする。

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