不具合の潰し方(再発防止の実務)──現場ですぐ使える手順とチェック

コラム・調達豆知識

発注者の視点で見た「不具合対応力」という経営力

RE:GENは、調達という立場から多くのサプライヤー現場を見てきました。
発注者の視点で見れば、不具合対応の姿勢にはその会社の“経営力”が表れます。

一方で、私たちは同時に、中小製造業を中心とするサプライヤーの支援にも携わっています。
現場を歩いていて強く感じるのは、不良を出さない会社よりも、
不良をどう潰すかを知っている会社のほうが強いということです。

不具合対応とは「責任を取る場」ではなく、「信頼を取り戻す実践の場」
発注者側に信頼される会社とは、単に報告が早い会社ではなく、
リカバリーの力・波及の読み・再現検証の精度で差をつける会社です。

本稿では、調達の現場から見た“不具合対応の本質”を整理しながら、
サプライヤー側が“信頼を積み上げるための潰し方”を、実務的な視点で解説します。

👉不良対応こそ最高の営業だ──品質保証が信頼をつくる現場

不具合発生時の「初動報告」で信頼が決まる

不具合が起きたとき、最初に問うべきは「なぜ起きたか」ではありません。
“どんな状況かを、正確に報告できるか” です。
初動報告の精度が低いと、対策も誤り、リカバリーも遅れます。
品質対応の本質は、報告書の体裁ではなく、
「動き出すまでのスピードと内容の確かさ」にあります。

RE:GENでは、報告段階で次の5項目を確認するよう指導しています。

【初動報告で確認すべき5項目】

① リカバリー時期
 現場復旧・代替生産・再納入が「いつ完了できるか」。顧客影響の時間軸を明確化する。

② 波及範囲
 不具合が単発(スポット)か、同条件ロットや他工程へ波及する可能性があるか。

③ 発生要素の分類
 発生系(内部起因)か、流出系(検査・管理起因)かを即時切り分ける。

④ エビデンスの有無
 原因を裏づける客観的データ(写真・寸法・履歴・条件記録など)が揃っているか。

⑤ 再現性の確認
 現場で再現可能か。再現条件を特定し、検証済みか。再現できない原因分析は“仮説”に留まる。

報告とは「書くこと」ではなく、「動きを早めるための情報共有」。
この5項目を押さえるだけで、原因追求・顧客対応・再発防止の精度が大きく変わります。

不具合は2種類ある──発生系と流出系を分けて考える

「不良を起こした」と一言で言っても、実際には 発生系 と 流出系 に分かれます。
これを混同すると、再発防止策がずれ、同じトラブルを繰り返します。

【不具合の2分類】

発生系
 ・主な原因:加工ミス、条件ズレ、段取り不良など
 ・対策の主眼:作業・設備・条件の安定化
 ・担当意識:技術・現場主導

流出系
 ・主な原因:検査漏れ、誤判定、情報伝達ミスなど
 ・対策の主眼:検査・管理・報告の仕組み強化
 ・担当意識:品質保証・調達主導

発生を潰すのは「現場の技術力」
流出を潰すのは「組織の仕組み力」
再発防止会議でこの視点が抜けていると、「再教育」「注意喚起」といった曖昧な対策で終わり、
構造は変わりません。

「なぜなぜ分析」は“掘る”より“つなぐ”

なぜなぜ分析(Why-Why Analysis)は、不具合の原因追求において基本の手法です。
しかし、形式的に「なぜを5回」と繰り返すだけでは真因には届きません。
重要なのは、“掘ること”ではなく、“つなぐこと”です。

RE:GENでは、次の3ステップを推奨しています。

① 特性要因図(魚の骨図)で初期整理
 現象を4M(Man, Machine, Material, Method)で分類し、全体像を把握する。

② 条件の切り分け(真因マトリクス)
 再現する/しない条件を整理し、「再現できる原因」だけを残す。

③ 部門横断レビュー
 品質・技術・調達の三者で確認し、「現場で本当に再発防止できるか」を検証する。

真因とは「説明できる原因」ではなく、「再現を止められる原因」。
そこに到達できる“なぜ”だけが、信頼を取り戻す力になります。

再発防止策の「質」を上げる4条件

多くの会社では、再発防止策が“報告書のための作文”になっています。
RE:GENでは、次の4条件を満たさないものは「未完了」とみなします。

① 再現性の排除
 不具合を再現できない構造・条件に変えたか。

② 水平展開
 同様の工程・設備・仕入先に展開されたか。

③ 検証履歴
 再発防止策の有効性を確認するデータがあるか。

④ 責任所在
 維持・監視の責任者が明確か。

再発防止とは「報告書を書くこと」ではなく、
“再発しない状態を維持できる仕組み”を残すことです。

調達と品質をつなぐ「潰す力」

不具合対応では、部門の立場がぶつかりやすい。
品質は「再発防止を最優先に」、調達は「コスト影響を最小に」、
営業は「顧客対応を最速に」──どれも正しい。
だが、それぞれが別々の“正論”を主張しているだけでは潰れません。

RE:GENは、調達を中心に「再発防止会議」を
報告の場から“再設計の場”へ変える支援をしています。

• 問題解決責任を明確にし、主語を決める。
• 調達がファシリテーターとして品質・技術・経営をつなぐ。
• 改善案をコスト・納期・リスクの3軸で整理し、実行可能な形に落とし込む。

こうしたプロセスによって、単発的な「対応」から脱し、
“潰す力”を企業文化として根づかせることができます。

「潰す力」は経営力である

不具合を潰すとは、単に現場を直すことではありません。
それは、現場の知見を経営資産に変える行為です。

再発防止に本気で取り組む企業は、ムダな報告書や形式的なQC会議が減り、
結果的にコスト・リードタイム・信頼のすべてが改善していきます。

不良は避けられない。
しかし、「潰し方」には会社の覚悟が表れます。
それを仕組みと習慣に変えられる企業こそ、
品質で信頼を勝ち取り、経営を強くしていきます。

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