改正下請法で「新たに対象になる」会社が直面する現実とは:保護と競争力の両立

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保護の裏側にある「取引の再構築」

これまで下請法(正式名称:「下請代金支払遅延等防止法」、改正後は「中小受託取引適正化法」)の対象外だった企業が、今回の改正や事業の成長(人員増、売上増など)により、
新たに法の適用対象となる「中小受託事業者」となるケースが増えています。

「法的に保護される側になる」ことは朗報に聞こえますが、
親事業者との関係や、自社のこれまでの競争環境に大きな変化をもたらします。
今回は、新たに下請法の対象となる中小企業が直面する現実的な課題と、取るべき対策を解説します。

【豆知識】来年1月施行の改正下請法(取適法)をわかりやすく解説!

1. 「下請対象になる」とはどういうことか?

📌 適用対象拡大のポイント

これまで対象外だった企業が、以下のいずれかの要件を満たすことで、下請法の適用を受ける
中小受託事業者(旧:下請事業者)になります。

1. 資本金基準: 従来の基準に変更はありませんが、取引内容によって資本金の区分があります。

2. 従業員数基準の導入(改正の鍵):

製造委託、修理委託など:親事業者の従業員が300人、自社(下請事業者)の従業員が300人以下の場合など。
役務提供委託など:親事業者の従業員が100人、自社(下請事業者)の従業員が100人以下の場合など。

この適用を受けることで、「保護の傘」に入ることになりますが、
傘に入ったことで親事業者との「関係の質」が変わる可能性があるのです。

2. 親事業者も大わらわ!管理体制の「緊急構築」

中小受託事業者が「保護される側」になるということは、
親事業者が「新たな法的義務を負う側」になるということです。
2026年1月の施行に向け、親事業者側も以下の点で大規模な準備に追われています。

🚨 親事業者が対応に追われている主なポイント

法務・経理体制の総点検:
新しい従業員数基準に基づき、すべての取引先を再リストアップし、どの取引が新たに法の適用対象になるかを緊急で確認しています。

契約・発注プロセスの全面改修:
発注書に必須の12項目を漏れなく記載するためのシステム改修や、現場への教育が行われています。

支払いサイトの短縮と資金手当:
手形が原則禁止になるため、これまで長期手形で支払っていた資金を、現金や電子記録債権に切り替えるための財務戦略の見直しと、新たな資金調達、銀行との交渉が進められています。

「価格協議」ルールの作成:
中小受託事業者から価格交渉があった際に、どのようなプロセスで、誰が、何を根拠に協議に応じるかという社内ルール(ガイドライン)を急ピッチで作成しています。

このように、親事業者側は「コンプライアンス・コスト」と「資金コスト」の急激な増加に直面しており、これが中小受託事業者の取引に大きな影響を与えます。

3. 新たに対象となる中小企業が直面する現実的な変化とリスク

法適用によって、親事業者側の管理負担が増えるため、これまで「下請法対象外」という柔軟性を武器にしていた企業ほど、取引に影響が出る可能性があります。

(1) 取引コスト増による「発注控え」リスク

親事業者が法的な管理負担や資金コストを嫌うあまり、以下の行動に出る可能性があります。

取引先の再編:
法的な手間が増えるくらいなら、そのコスト増を吸収できるより大規模な取引先に発注を集約したり、海外調達に切り替えたりする可能性があります。

発注手続きの長期化:
親事業者の法務部門やコンプライアンス部門のチェックが厳しくなるため、これまでのように口頭や簡易なメールでスピーディに進めていた案件が、契約手続きの煩雑化によって停滞する可能性があります。

「対象になった=自動的に有利」ではなく、「このコストを払ってでも選ぶべき取引先か」という視点で評価されることになるのが実情です。

(2) これまでの「柔軟性」という優位性の喪失

下請法の「対象外」であることは、納期や支払条件について親事業者と柔軟に取り決めができ、
価格交渉のスピード感も武器の一つでした。

しかし、法適用を受けることで、契約内容の変更や見積もり調整にも親事業者側の慎重な手続きが求められ、取引の「柔軟性」が失われる可能性があります。

(3) 社内で求められる新たな実務対応

「守られる立場」になるためには、「守られるに足る準備」が必要です。
新たに下請法の対象となる企業は、取引の透明性と記録保持の体制を急いで構築しなければなりません。

契約・発注書の整備:
親事業者から送られてくる発注書が、法的な要件(12項目)を満たしているかチェックする仕組み。

価格交渉の根拠準備:
原材料費、人件費、光熱費などのコスト上昇を裏付ける具体的なデータを、親事業者との協議に備えて作成するルール化。

RE:GENとして伝えたいこと:リスクを「転機」に変えるために

この改正は、親事業者と中小企業双方にとって、取引の質と透明性を向上させる「転機」です。

法対応をきっかけに、自社の原価構造の「見える化」と契約プロセスの透明化を進めることが、
最大のチャンスとなります。

非価格競争力の確立:
法的なコスト増があっても「この企業と取引したい」と思わせる、
独自の技術力、品質、提案力といった非価格競争力を確立することが急務です。

対等なパートナーシップへの移行:
コストデータと法令の知識を背景に、単に要求に従う「下請」ではなく、
対等な「パートナー」として、公正な取引関係を再構築する絶好の機会です。

RE:GENは、こうした変化の中で、中小企業の皆さまに寄り添いながら、
現場で役立つ実務的なサポートを続けてまいります。

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