導入:提案が通らないバイヤーのジレンマ
調達の現場でこんな経験はないでしょうか。
- 「このサプライヤーに切り替えれば大幅なコスト削減になる」と思っても、経営層からは「リスクが高い」と一蹴される。
- 「在庫削減でキャッシュフロー改善が可能」と伝えても、製造現場からは「急に止まったら困る」と反発される。
- 「理論原価をもとに交渉すべき」と提案しても、他部署からは「難しい話はやめてくれ」と煙たがられる。
バイヤーは 経営層・現場・他部門 という複数の相手に対して、常に橋渡し役を担っています。どれほど正しい提案でも「伝わらなければ存在しない」のと同じ。だからこそ、伝え方の武器が必要になります。
その武器のひとつが PREP法 です。
PREP法とは?バイヤーに最適な理由
PREP法は、結論(Point)→理由(Reason)→具体例(Example)→結論(Point) の順で話すシンプルなフレームワークです。
- 結論から始めることで相手の理解を早め、
- 理由を補足して納得感を与え、
- 具体例で腹落ちさせ、
- 最後に再度結論で行動を促す。
調達の世界は「時間との勝負」。経営層の会議や現場の打ち合わせでは、回りくどい説明は敬遠されます。PREP法は、短時間で「何をして欲しいか」を伝えるのに極めて相性が良いのです。
調達の現場での活用シーン
① コスト削減提案を経営層に
- P:今回の部品をA社からB社に切り替えれば、年間500万円のコスト削減が可能です。
- R:現在の取引価格は業界平均より15%高く、改善余地があるためです。
- E:こちらが比較見積のデータです。品質・納期条件は同等で、リスクは低いと判断しています。
- P:したがって、B社への切り替えを進めるべきです。
👉 「結論」から入ることで、経営層が瞬時に意思決定できる。
② 在庫削減提案を製造部門に
- P:安全在庫を30%削減することで、キャッシュフロー改善につながります。
- R:過去2年間の納入実績を分析したところ、実際に使われる前に廃棄となった部品が全体の8%に達しているからです。
- E:一度に大量に買うのではなく、ロットを小分けにすれば供給安定性を保ちながらコスト負担を減らせます。
- P:したがって、在庫戦略の見直しを進めましょう。
👉 「理由」と「実例」を挟むことで、現場の抵抗感を和らげられる。
③ 抵抗勢力への説得(経理や経営者直下の部門)
- P:短納期対応のためにスポット発注を提案します。
- R:通常ルートでは間に合わず、顧客への納品遅延リスクがあるためです。
- E:今回の対応を逃すと、補償額は数百万円規模。過去の同様事例でも臨時発注で被害を防いでいます。
- P:よって、今回は特例としてスポット対応を認めていただきたいです。
👉 「リスク」を数字で示し、反対しにくいロジックにする。
PREP法を成功させる4つのコツ
- 数字を必ず盛り込む
「安くなります」ではなく「500万円削減できます」と明言。 - 理由はシンプルに
経営層や他部門は細かい技術説明を求めていない。意思決定に必要な根拠だけを残す。 - 具体例は1つに絞る
複数挙げるとぼやける。最もインパクトのある例を提示する。 - 再結論は“行動提案”で
「切り替えを進めるべき」「在庫削減に取り組もう」など、Yes/Noで答えられる形にする。
まとめ:PREP法でバイヤーの声を通す
調達部門は「伝書鳩」ではなく、会社の利益を守る 戦略部門 です。
しかし、どれほど正しい提案でも伝え方ひとつで「却下」に終わることがあります。
PREP法を使えば――
- 経営層には「結論ファースト」で時間を無駄にしない。
- 現場には「理由+具体例」で納得感を与える。
- 抵抗勢力には「リスク数字」で論破する。
バイヤーが論理とデータで組織を動かすための武器、それがPREP法です。
RE:GENは、調達の“知識”だけでなく“伝える力”も一緒に磨きながら、中小製造業の未来を支えていきます。
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