バイヤーの伝え方改革② STAR法で「伝わる調達」を実現する

ものづくりを支える調達

導入

調達の仕事では、いくら正しいことを言っても「伝わらなければ意味がない」と痛感する場面が多々あります。

例えば、サプライヤーとの交渉。経営層への提案。社内の設計部門との調整。

どれも「伝える力」次第で結果が変わります。

前回は、ロジカルに説得するための PREP法 をご紹介しました。

今回は、より「物語」として心に響かせるためのフレームワーク STAR法 を、バイヤーの日常に照らして解説します。

STAR法とは?

STAR法は、本来は面接や評価の場面で活用される「伝え方の型」です。

  • Situation(状況):どんな背景で
  • Task(課題):どんな使命や課題を背負い
  • Action(行動):どんな行動を取り
  • Result(結果):どんな成果を出したか

という流れでストーリーを組み立てる手法です。

これを調達の現場で使うと、「伝わるだけでなく、記憶に残る説明」が可能になります。

調達にSTAR法を応用する

1. サプライヤー交渉でのSTAR

  • S(状況):ある部品が他社より2割高い価格で購入している。
  • T(課題):全体のコスト削減目標を達成するために価格改善が必要。
  • A(行動):全社購入実績データを提示し、歩留まり改善の可能性を議論。
  • R(結果):5%の値下げと納期短縮の合意を得た。

数字だけで「安くしてください」と言うよりも、ストーリー形式で背景と結果を整理すると、サプライヤーも納得しやすくなります。

2. 経営層への提案でのSTAR

  • S(状況):部品の単価が毎年上昇、利益率を圧迫。
  • T(課題):新しいサプライヤー開拓による価格低減の必要。
  • A(行動):展示会での候補探索、試作評価、条件比較の実施。
  • R(結果):主要部品で平均7%のコストダウンを実現。

経営者に対しては「結論」だけでなく「どんな努力をしたのか」が信頼を生みます。STAR法は努力を具体的に見せることができます。

3. 社内調整でのSTAR

  • S(状況):開発部門が希望する新素材は高コスト。
  • T(課題):コストと性能のバランスをとり、採用可否を判断。
  • A(行動):サプライヤーから代替素材の提案を取り寄せ、試験を依頼。
  • R(結果):性能は維持しつつ10%のコスト削減を達成。

「ただ高いからダメ」ではなく、課題→行動→成果を示すことで、他部署からの理解を得やすくなります。

STAR法を使うときの注意点

  1. エピソードを短くまとめる:長すぎると相手が疲れる。2〜3分で話せるサイズ感を意識。
  2. 結果を数字で示す:成果を「実感」ではなく「数値」で表すと説得力が増す。
  3. 「失敗談」も武器に:STAR法は成功体験だけでなく、失敗から学んだことを語るのにも有効。

RE:GENからの提言

調達は「伝書鳩」ではありません。

課題を整理し、行動を導き、成果を示す――この流れをSTAR法で形にすれば、調達は単なるコストカット要員ではなく 価値を創り出す存在 へと変わります。

STAR法を活用した「伝える力」を磨くことで、サプライヤー、経営者、社内関係者すべてを巻き込み、調達は企業の未来を動かすエンジンになれるのです。

まとめ

  • PREP法=ロジカルに短く刺す伝え方
  • STAR法=ストーリーで心に残す伝え方

二つを使い分けることで、調達の提案力は飛躍的に高まります。

RE:GENは「伝わる調達」を通じて、企業の調達力強化を支援しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました