【解説】在庫削減の落とし穴――数字合わせで失敗しないために

ものづくりを支える調達

在庫――バイヤーにとって永遠のテーマです。

「在庫日数を減らせ」「回転率を上げろ」と数字ばかりを追いかけ、気づけば本来必要な在庫まで削ってしまい、現場を混乱させた経験はありませんか?

在庫をただ“減らす”ことに固執すると、調達やサプライヤー、そして製造現場に大きな負担をかけ、逆にコストアップを招くことすらあります。

RE:GENが提唱するのは、在庫を「削減」ではなく「設計」するという考え方です。

本文1:在庫を“数字”でしか見ない危うさ

在庫管理の評価は「在庫金額」「在庫回転率」といった数値で語られることが多いものです。

しかし、この数値だけを追いかけると次のような落とし穴に陥ります。

  • 流動在庫ばかり削る
     動いている部品や消耗品を中心に削減し、肝心の戦略的に必要な在庫や安全在庫まで削ってしまう。
  • サプライヤーにしわ寄せ
     リードタイム短縮やロット分割を強引に要求し、サプライヤーのコスト構造を圧迫。結果的に部品単価が上がり「在庫減=コスト増」という逆効果に。
  • 死蔵在庫が放置される
     全体金額の削減だけを見ていると、使われない在庫(死蔵在庫)が温存されたまま。数字は良くても実態は改善していないケースが多い。

つまり、「数字を良く見せるための在庫削減」は、調達部門や経営にとって長期的な利益を損なうリスクがあるのです。

本文2:在庫の正しい分類と理論在庫の考え方

在庫を設計するためには、まず在庫を分類して考える必要があります。

  1. 流動在庫
     日々出入りする通常の在庫。削減のターゲットにされがちだが、必要量まで削ると現場が混乱。
  2. 戦略在庫
     将来的な需要増やサプライチェーンの不安定さに備え、あえて持つ在庫。災害や地政学リスクに備える意味でも重要。
  3. 死蔵在庫
     設計変更や需要減で使われない部品。管理リストから外れて放置され、資金を圧迫する“隠れ負債”。

そして、在庫設計の基準となるのが「理論在庫」です。

これは、需要予測・リードタイム・ロットサイズなどを前提に、最も効率的に回せる“あるべき姿”の在庫水準を示すものです。

理論在庫を意識することで、

「どれくらい在庫を持つべきか」

「どの在庫を削るべきか」

を合理的に判断できるようになります。

本文3:在庫を“設計”する実践アプローチ

RE:GENが提案する在庫設計のステップは以下の通りです。

  • ①在庫を分類・可視化する
     流動・戦略・死蔵に分け、どの在庫がどの役割を果たしているかを棚卸し。
  • ②理論在庫を算出する
     需要予測とサプライヤーのリードタイムをもとに、「最小限で最大の安心」を得られる在庫量を試算。
  • ③サプライヤーと協議する
     単なる在庫削減要求ではなく、「どうすれば理論在庫に近づけるか」を一緒に議論。リードタイム短縮やロット調整を押し付けるのではなく、双方の利益が出る形を模索。
  • ④仕組み化して回す
     在庫を設計するルールを社内に定着させ、PDCAを回す。定期的に見直すことで、数字のための在庫削減から脱却。

まとめ:在庫を“削減”ではなく“設計”する

在庫管理の本当のゴールは「数字を良く見せる」ことではありません。

在庫は “削減するもの”ではなく“設計するもの”。

死蔵在庫は減らし、流動在庫は最適化し、戦略在庫は武器にする。

そして、その全体像を理論在庫という物差しで測りながら、サプライヤーと共に最適解を導き出すことが重要です。

在庫を設計する発想を持てば、コストダウンと安定供給、そして企業競争力の強化を同時に実現することができます。

RE:GENはその伴走役として、在庫設計の視点を企業に根付かせるお手伝いをしています。

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